若手の志を枯れさせてはならない 官僚の働き方見直しを

政治部・楢崎貴司
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取材考記(楢崎貴司)

 このままでは、国の政策づくりを担う官僚に人材が集まらなくなってしまうのではないか。「キャリア」と呼ばれる幹部候補の若手の長時間労働について取材した時の感想だ。

 「国会開会中は日をまたぐことが当たり前」「コロナで業務が増えても、補充されない人員」「心身の限界で道路に飛び込みかけた同僚」――。記者と同じ30代の女性が語った言葉に、官僚たちの苦悩の一端を感じた。国会対応や議員への政策の説明などに追われる日々。政府は表向きは民間に「働き方改革」を呼びかけているが、「自分たちが最も『ブラック』な働き方」と言うのもうなずける。

 30代は子育て世代にもあたる。記者自身は7~2歳の3人の子どもがいるが、取材で聞いたような労働環境であれば、家庭を顧みることは難しいだろう。医療・介護・子育てを含め、官僚は国民生活に関わる政策の立案を担う。いまの働き方では、生活者の視点を欠いてしまわないか。広く国民の暮らしに即した政策をつくれるのか。心配になってくる。

 官僚は公務員として身分が保障され、国の行く末を左右するプロジェクトにも関わる。やりがいのある仕事に思えるが、「官僚離れ」は確実に進んでいる。キャリアの登竜門である総合職試験の今年度の申込者数は最少となり、20代の自己都合退職は13年度から約4倍に増加。30歳未満の官僚のうち、男性は7人に1人、女性は10人に1人が数年以内に辞めたいと回答したアンケートもある。

 政府は問題の「見える化」に向けて動く。昨年末にかけて実態調査を実施。これまで予算の上限の都合で満額が支払われなかった超過勤務手当(残業代)についても、全額支払う方針を示した。ただ、取材に応じた官僚はこう語っていた。「お金じゃなくて、国民のためによい政策を作るために官僚になったんです」

 「やる気」を生かすためにも勤務の環境を改善して「ゆとり」を確保して欲しい。私たちが税金で支える若い官僚を、政治家や幹部官僚が使い捨てするかのように扱ってもらっては困る。若手の志を枯れさせてはならない。(政治部・楢崎貴司)