実は名古屋な「ミルメーク」 牛乳嫌いを救ってきた逸品

若松真平
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 まぜることで牛乳の味が変わる粉末「ミルメーク」。発売から半世紀以上が経つロングセラーですが、地域によって知名度に差があります。学校給食に採用されているか否かによって大きく左右されるからです。名古屋市の会社が作っているのに、なぜか名古屋の学校給食では公式採用されていないという不思議な商品でもあります。

「牛乳を飲めない子が飲んだ」

 製造元の大島食品工業(名古屋市守山区)によると、ミルメークが誕生したのは1967年。

 脱脂粉乳から瓶牛乳への切り替えが進んだ時期で、「カルシウムビタミンなどの栄養が不足するのではないか」と心配した栄養士からの声がきっかけとなり、開発が始まりました。

 開発者は3代目社長の大島和男さん。カルシウムなどをそのまま牛乳にまぜてみましたが、おいしくなるはずがなく、試行錯誤することになりました。

 ある時、コーヒー牛乳を飲む子どもの姿を見て、インスタントコーヒーとカルシウムを入れて飲んだらおいしくなることを発見。

 砂糖や鉄分なども追加し、合成着色料を使わず作ったのがミルメークです。名前は「ミルクでつくる(make)」から名付けました。

 「牛乳を飲めない子が飲んだ」「牛乳が余る冬場でも飲める」と評判になり、学校給食での導入が進み、現在に至ります。

本社がある名古屋で採用しなかった理由

 コーヒー味から始まって現在は、ココア、いちご、バナナ、メロン、抹茶きなこ、キャラメル、紅茶の計8種類があります。

 牛乳の容器が瓶から紙パックへと変わりつつあった時期には、より溶けやすいように、粉末ではなくチューブに入った液体タイプも売り出しました。

 給食用ミルメークの2018年度の出荷実績は約1240万食。47都道府県すべてを網羅していて、都道府県別で見ると地元・愛知県が毎年1位で、全体の2割ほどを占めています。

 ところが、本社がある名古屋市で「給食で飲んだことがある」という話を聞きません。

 名古屋市教育委員会によると、市立小学校の献立は市教委が一律に決定しており、過去の導入実績についても「把握している限りでは記録にありません」とのこと。

 採用していない理由は「牛乳の味をそのまま味わってほしい」という方針だったからだそうです。

 ところが2019年12月に大きな変化が。市立小学校全261校の給食で、2週間かけて順次1回ずつ試験的に提供されたのです。

 2017年度に市立小学校で廃棄された牛乳は推定約84万本、金額にして約4300万円分。これを少しでも減らすための方策でした。

 営業部部長の原谷昭久さん(53)は「名古屋生まれの商品だけに少し寂しい思いをしていましたが、試験的に導入していただけると聞いて社員一同、本当に喜びました」と振り返ります。

コラボ商品に販路拡大

 試験提供後の児童アンケートでは、半数は好意的でしたが、やはり好きではないという意見も一定数ありました。

 そのため本格導入には至らず、今年度からは希望する学校が選択できるようにして、引き続き効果を確認しているそうです。

 そんなミルメークですが、学校給食以外にも販路を広げるべく動いています。

 1993年からは家庭用商品を投入。揚げパンなどに使えるクッキング用もラインアップしました。

 コラボ商品としてロールケーキやキャンディー、チョコクランチも販売し、期間限定ながら同じく名古屋市に本社があるフジパンと、ミルメークを使ったスナックサンドも販売しました。

 原谷さんによると、今後は大人向けや、高齢者向けのミルメークも開発したいと考えているそうです。

 「児童数が増えない限り、給食用はこれ以上増えることはないでしょう。それでも給食リクエストなどで選んでいただくことも多く、たくさんの方の思い出に残っているようです。思い出して笑顔になっていただけることがうれしいので、これからもミルメークを作り続けていきます」(若松真平)