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 香川県三豊市は19日、義務教育を十分に受けられなかった人や外国人らの学ぶ場となる夜間中学校を、2022年4月に開校する方針を発表した。夜間中学の設置は県内で初めて。今年4月には、全国初となる県立の夜間中学が徳島県と高知県で開校する予定で、四国では3校目となる。

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 この日、山下昭史市長が21年度の施政方針の中で明らかにし、「十分に教育を受けられなかったことによる貧困の連鎖を断ち切り、学びたいと望むすべての人に門戸を開放したい」と述べた。市在住の外国人は約1千人おり、日本語教育のニーズが高まっていることも背景の一つに挙げた。市外からも希望があれば受け入れる方向で議論するという。

 市教育委員会によると、戦前戦後に学校に通えなかったり、不登校などで欠席が多いまま中学校を卒業したりした人のほか、外国人の入学を想定している。学校など既存施設を活用する見通し。識者や県教委の担当者らでつくる検討委員会を3月にも立ち上げ、運営のあり方を協議する。

 夜間中学をめぐっては、文部科学省が17年、全都道府県に少なくとも1校を公立で設置するよう、16年に成立した教育機会確保法に基づく指針で求めた。この法は年齢や国籍に関わらず、希望者に就学の機会を提供するよう、自治体に義務づけている。20年度は東京、大阪、京都、広島などの10都府県に計34校がある。

 県教委は19年度に夜間中学のニーズ調査を実施し、国際交流協会や高松刑務所などの協力で計500人が回答した。171人が「自分が学んでみたい」と答え、理由は「中学校を卒業したが学び直したい」が86人、外国人が73人だった。学びたいと答えた人は丸亀市、高松市、宇多津町の順に多かった。

 県教委は、県内でも一定のニーズがあると分析。設置を検討するよう市町教委に呼びかけてきた。

 三豊市教委は今年度、独自に市内のニーズ調査を実施。回答数297人のうち105人が学んでみたいと答え、そのうち外国人が89人、「中学校を卒業したが学び直したい」が11人、「中学校を卒業していない」が4人だった。(多知川節子)

必要性を訴えてきた僧侶 上野忠昭さん

 夜間中学の必要性を訴えてきた高松市の僧侶で、高松刑務所の受刑者に学習指導をしている上野忠昭さん(64)に話を聞いた。

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 受刑者と向き合って話を聴く宗教者「教誨(きょうかい)師」として、2002年から高松刑務所に通っています。06年の法改正を受けて始まった受刑者への「教科指導」では数学を担当し、20~80代の約50人を指導してきました。

 そこで、読み書きや、簡単な足し算引き算もできない人がいることを目の当たりにしました。レジでお金が足りないと言われてパニックになって逃げてしまうなど、犯罪を繰り返す一因にもなっているのです。刑務所の幹部は「刑務所には1割の悪い人と、9割の弱い人がいる」と言いました。

 小学校の算数からやり直す人が多いですが、できる/できないの境を確認してそこから始めると、できるようになります。うつむきがちだったのが背筋が伸び、うれしそうで穏やかな顔になり、自ら問題集を購入する人もいます。そんな姿を見ていると、「昨日の自分より成長することは大きな喜びで、学びは生きる力になる」と実感します。

 勉強が出所後の就職につながるほど簡単ではないでしょう。ただ、漢字が読めないからと行政の窓口を避けるようなことが減り、助けを求める力につながれば、再犯防止になります。

 勉強したいと思った時、できる場所があってほしい。縦割りで教育と福祉は分かれがちですが、夜間学校と関わりを持てば相談する人にも会える、という場にしてほしいと思います。

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 〈夜間中学〉 正式には中学校夜間学級。週5日、夕方以降に開校し、教員免許をもつ人が昼間の中学と同じ教科の授業をする。修了すれば中学卒業資格をえられる。授業料は無料。2020年1月時点の文科省調査では、9都府県の33校の生徒数は約1700人。外国人が8割を占めている。

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