PCRセンターまでの道のり寄り添うタクシー運転手

新型コロナウイルス

笹山大志
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 【兵庫】新型コロナウイルス感染の不安を抱える人たちの「足」となり、日々、PCR検査センターに送り届けるタクシー運転手がいる。車中では感染に気をつけつつ、そっと言葉を掛ける。

     ◇

 記者(27)は1月下旬、微熱と倦怠(けんたい)感から神戸市内の医療機関を受診。PCR検査を受けることになった。神戸市からの委託で、市医師会が運営するPCR検査センターの場所(非公表)を告げられた。

 「センターへはマイカーで」と医師。記者は運転免許は持っているが、車は持っていない。レンタカー移動を告げると、「それはダメ。専用のタクシーを用意しますね」。

 神戸市医師会によると、センターは感染を防ぐため、公共交通機関やレンタカーを使って訪れる人を受け付けていない。マイカーや運転免許を持たない人に紹介しているのが、市医師会が委託する専用タクシー。料金は市が負担する。

 翌日の検査当日。記者宅前に止まったのは、シルバーの白ナンバー車だった。タクシーらしくないのは風評被害を防ぐため。それでも近所の人から「あんた保健所の人?」「どこの家がコロナや」と聞かれることがある。

 車内に入ると、運転席と後部座席の間はビニールカーテンで仕切られていた。数十分の道のり。運転手がバックミラー越しにこちらを気にかけてくれた。「検査結果が出るまで、余計なことを考えないようにしましょう」。記者の検査結果は陰性だった。

 この時の男性運転手(65)=神戸市=が後日、取材に応じてくれた。

 乗務歴30年以上の個人タクシー運転手。市医師会の知人から「感染への恐怖から運転手のなり手が見つからない」と依頼された。いつもにこにこ笑う能天気な性格と自認する。「困っている人がいるなら手伝います」と、昨年8月から引き受けた。

 利用者は免許を返納した高齢者、市街地に住むサラリーマン、学生と幅広い。車内では感情をあらわにする人も少なくない。「会社に迷惑をかけてしまう」「私がコロナになって夫が働けなくなるかも知れない」と涙する人も。男性は言う。「不思議とみんな自分の心配は口にしない。人に迷惑をかけないか心配している人ばかり」

 感染拡大防止の観点から車内での会話は避けた方がいい。でも未知の恐怖に押し潰されそうな利用者は、孤独感からか運転席に向けて不安をぶつけてくる。だから、じっと話を聞いて一言励ます。「検査の結果が出るまでわからないじゃないですか。取り越し苦労になりますよ」。それが数十分の道中にできる精いっぱいのことだ。

 検査を終え送り届けると、一番つらいはずの利用者が温かい言葉をくれる。「車がないから助かりました」「ばれないように検査を受けさせてくれてありがとう」。やりがいをかみしめながら、ほぼ毎日、ハンドルを握っている。(笹山大志)

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