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 好きなときに出かけ、好きなときに爪を研ぐ。自由気ままに暮らしていた猫が、ある日突然、1本の木になってしまう――。自転車事故で首から下に障害を負った画家の女性が、リハビリを経て、1冊の絵本を描き上げた。世界に1冊の手づくり絵本は「より多くの人に届けよう」という周囲の後押しを受け、クラウドファンディングを経て、今年1月に出版された。

拡大する写真・図版「てがき絵本 まる」(はる書房)から

 「てがき絵本 まる」(はる書房)は、ピンクの水玉模様の飼い猫「まる」が主人公。幸せに暮らしていたまるは、突然小さく細い木になってしまい、散歩に行くことも、好きな場所でひなたぼっこもできなくなる。しかし、あることに気付き、最後は「とってもしあわせ」になったまるの姿が描かれる。

ドクターヘリで緊急搬送、目が覚めると…

 作者の今村裕子さん(55)=千葉市在住=は、2017年1月、趣味のロードバイクで事故に遭った。なじみのカフェに向かう途中、下り坂のきついカーブに差し掛かったところまでは覚えている。転倒した今村さんは、ドクターヘリで病院へ救急搬送され、目が覚めたときには、首から下の感覚がなくなっていた。

拡大する写真・図版今村裕子さん=千葉市

 手足は全く動かず、コンクリートで固められているよう。一方で全身は熱くしびれ、熱湯の中にいるようだった。しかしこのときは、「リハビリをすればいつか治る」と思っていた。自転車仲間にも事故から復帰した人がいて、「自分もきっと動けるようになる」と思っていた。

 動けるようになりたい一心で、きついリハビリに取り組んだ。しかし、数カ月が経っても、1人でご飯を食べることも、移動することもできない。仲間がスマホに送ってくれたツーリング中の写真を見て、「もし回復しても、もう自転車には乗れないんだ。山登りもできないし、いろんなことができなくなった」と、落ち込んだ。

絵なら描ける?

 それでも、「何もできなくなってしまったけれど、何かしたい」と考え、「絵なら描けるんじゃないか」と思いついた。東京芸大で日本画を学び、絵画教室で絵を教えていた今村さん。元児童書編集者の指導を受けながら、一人一人が絵本をつくる「手づくり絵本の会」にも参加し、事故に遭うまでに5作の絵本を完成させていた。

 スプーンを持つ練習で使ってい…

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