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 乳白色の肌の裸婦像で名高い画家、藤田嗣治(1886~1968)だが、人物の周りに描かれたこだわりの布にも目を向けてみては――。そんな趣旨の特別展「藤田嗣治 布との対話」が、秋田県立美術館で3月7日まで開かれている。

 手先が器用だった藤田は1913年に渡仏すると、現地で売られている洋服が体格に合わず、自分で服を縫っていたという。芸術家として今までにないデザインを生み出そうと、ファッション誌を読み込んだ。日本の美術学校で裁縫を教えている最初の妻・鴇田(ときた)とみに宛てた手紙では、パリで流行する服を紹介したり、布の端切れを同送したりと、布に強い関心を寄せていたことがうかがえる。

 布へのこだわりは絵画からも見てとれる。同館学芸員の小泉俊貴さんは「見た人が布の手触りを錯覚するくらい、藤田の描写の腕前が発揮されている」と説明する。肖像画の女性のドレスにも、裸婦が横たわるベッドのシーツにも、細かなしわが刻まれて「布としての存在感がアピールされています」。

 布をいかに精緻(せいち)に描いたか、実物と見比べて知ることができるのが今回の展示の目玉。日本の伝統的な染色法による「筒描(つつがき)」の布を藤田は大切にし、絵の中に度々登場させている。布の茶道具の文様が忠実に再現され、単なる背景としてではない愛着が感じられる。実物の布は今回フランスから取り寄せて展示した。

 衣服はときに、着る人の職業や身分を表す存在として描かれる。藤田は複数の人物を描くとき、基本的に違った服を着せており、「ひとりひとりを違う存在として描いたことが分かる」と小泉さん。そう言われると、藤田が描いた同館の大壁画「秋田の行事」もまた違って見えてくる。

 絵画や衣服、染織品など約40点のほか、妻への手紙も展示される特別展は、3月7日までの午前10時~午後6時(最終入館は午後5時半まで)。一般800円、70歳以上は720円、学生500円、高校生以下無料。問い合わせは同館(018・853・8686)へ。(野城千穂)

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