一里塚のエノキは「時代の道しるべ」 治療始まる 愛知

臼井昭仁
[PR]

 江戸時代に築かれた笠寺一里塚(名古屋市南区笠寺町、白雲町)で、衰えが目立っていた樹齢400年のエノキの治療が始まった。樹木医たちは、「木の生命力」に期待して様々な治療方法を試みる。治療費用に寄付をした地域住民らも、その効果を気にかけている。

     ◇

 笠寺一里塚は、名鉄本笠寺駅から歩いて10分ほどの住宅街にある。旧東海道など街道沿いに設けられた一里塚は、名古屋市内にかつて9カ所あったとされるが、笠寺にしか残っていない。

 塚の高さは3メートル。その頂上に生えているエノキは高さ10メートル、幹回り3・8メートルで、市の都市景観保存樹に指定されている。

 ただ、伊勢湾台風(1959年)で幹が割れ、樹勢の衰えが進行。92年度に割れ目をモルタルや鉄筋、金網で覆うなどの治療を施したが、いまではモルタルにも割れ目が生じ、雨水が入り込んで腐食の原因となっていた。今回の治療を担当する樹木医たちによると、枝が細く、葉は小さく、落葉の時期も遅い「老木」状態になっているという。

 治療にあたり、名古屋市は昨年7月、寄付を募った。12月末までに165件計267万円が集まった。

 3月までを予定する治療では、幹や根の割れ目を覆っていたモルタルなどをはがした上で、腐食した部分を取り除き、殺菌剤と防腐剤を注入。支柱も施す。事業費は計432万円。

 担当する樹木医の1人、鈴木重蔵さん(76)は、「昔のように木に直接、手を加えるようなことはせず、その生命力を引き出したい。国内には樹齢が7、800年のエノキもあるので復活はできると思う」と話す。今回の大がかりな治療の後も、再生に向け、割れ目に腐葉土と堆肥(たいひ)を詰めるといった様々な工法を検討し、実施する予定だ。

 名古屋市緑地維持課の担当者は、「3D測量も定期的に実施して、状態を正確に把握するようにしたい。いずれにせよ、長い時間をかけた取り組みになる」と話している。

 地域住民に愛された名木とあって、関心も高い。南区呼続3丁目の宇津野真平さん(90)は19年前、根元に実からできた幼木を見つけ、「後世に引き継ぎたい」と育てた。その2本は近くの呼続公園と長楽寺の敷地内で「2世」として育っている。「昭和20年の空襲でも焼けなかったほどの生命力があった。これから先も生き残って、時代の道しるべとも言える役目を果たし続けてほしい」と話した。(臼井昭仁)

     ◇

 〈一里塚〉 江戸時代、主要街道に1里(約3・9キロ)ごとに築かれ、エノキなどの木が植えられた。距離を測る目印のほか、荷物の運賃計算の基準になった。日本橋(江戸)を起点とする旧東海道には、100カ所以上造られた。