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 群馬県太田市が募集した市民ライターによる昨春創刊の街ガイド「OTAマガジン」が都会的でおしゃれだと好評だ。プロの編集者の指導を受け、今年3月末の発行に向け、第2号の準備が進む。スタッフは無報酬で取材費も一切出ない。それでもライターの募集には定員の2倍の応募があった。その半数は県外から移り住んだ人たち。何がそんなに魅力なのか。

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 「小さなことも立ち止まって見ると面白い」「太田は何もないと言うけれど、実は見ているようで見ていない」。市民ライターたちの活発な意見が飛び交う。

 雑誌「OZマガジン」元統括編集長の古川誠氏を講師に迎え、「OTAマガジン」第2号の編集会議が昨年11月末にあった。「太田市の解像度を上げる」という創刊号のテーマに替わるものを探すのが狙いだ。「ピントを合わせる」という意見が出ると、古川氏がすかさず「それ面白いね」と助言し、議論の深掘りを促す。

 会議は昨年10月から計6回。参加者の中には、かつて「江上冴子」のペンネームで小説「エデンを遠く離れて」など35作品を出した斉藤あおいさん(50)や、イラストレーター、映像ディレクターといった本職のある人も少なくない。

 隠れ家的な店や場所を分担して取材し、原稿に仕上げる。第2号は創刊号より8ページ増のA4判40ページ。1万部を無料で配布予定だ。OTAマガジンの目的は、市民に地元の魅力を伝えること。第2号の市民ライターは20人。定員の2倍の応募があり、全員採用された。市を驚かせたのは、県外からの移住者が9人もいたことだった。

 市広報課の河田佳樹さん(39)は「つながりたいという欲求が移住者には強いからでは」と言う。「こんなに魅力がある街なのになぜ気づかないのかと、みなさん不思議がる。いい意味でのよそ者の視点があり、我々には見えないものが見える。新しい視点や気づきを与えてくれる」

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 秋田県出身の写真家、吉良幸恵さん(37)は創刊号に続く参加だ。

 大学を出て写真用品会社に就職し、全国各地で店長を務めた。8年前に結婚し、夫の赴任先の太田に移り住んだ。正社員だと勤務地を選べないためいったん退職し、契約社員として入社し直した。伊勢崎店の店長時代に第1子を出産。1年間の産休・育休後の配属先の太田店で、育児のため時短勤務を願い出て、1スタッフとなった。

 だが、第2子を身ごもると、「契約社員のくせに」と言われている気がした。会社を休めば迷惑をかけると退社を決めた。

 第2子は無事出産したが、会社でのキャリアを諦めた無念さと、仕事と違って誰も褒めてくれない子育ての孤独感で落ち込んだ。

 変化が訪れたのは、フリーの写真家となってから。食事で行きつけの個人店や知人ができると、地域に目が向いた。「作りすぎた野菜をあげる」「サクランボ食べていけ~」などと声をかけられることも増えた。

 市民ライターの募集を知ったのは2019年夏。写真のスキルを雑誌作りに生かせるのではと思い、迷わず応募した。有名な雑誌編集者の講義を無料で聴けるのも魅力だった。何よりママ友や仕事仲間以外の人とのつながりが欲しかった。

 「太田は何もない、という人がいるけど、とんでもない。閉鎖的だった郷里と比べても風通しがいい。とても住みやすい街ですよ。もっと太田を好きになりたくて、また参加しました」(長田寿夫)

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