ワクチンで感染は減ったのか 疫学者が教える数字の見方

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聞き手・合田禄
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 新型コロナウイルスのワクチン接種が多くの国々で進むなか、その効果に世界が注目している。すでに国民の半数近くがワクチンを打ったイスラエルでは、次々と「ワクチンの効果がある」とする研究結果が出てきている。この結果から、ワクチンの有効性の高さが証明されたと考えても差し支えないのか。疫学者の鈴木貞夫・名古屋市立大学大学院教授に聞いた。

 ――新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、効果や副作用の報告が出始めています。どんな点に注意してみる必要がありますか。

 疫学として数をみるときに、「記述」なのか、「比較」なのか、ということが大切です。感染した人の数や亡くなった人の数について、一時的な情報をまとめたものが「記述」です。「比較」というのは、それをグループに分けて比べることです。

 例えば肺がんの場合、肺がんの患者の死亡率が何%だったというのは記述です。それを喫煙者と非喫煙者に分けて、それぞれの死亡率を分けて考えると比較になります。そうなると、肺がんと喫煙の因果関係という視点が出てきます。

 新型コロナウイルスのワクチンの効果を示す数字を見る際には、まず「比較されたものか」ということが大切になります。

 先月、北欧ノルウェー新型コロナウイルスのワクチンを接種した高齢者数十人が死亡したという報道がありました。これは記述です。ワクチンを打っていない高齢者の死亡率と比較されていないからです。この事例のように数字を単に生の値として出すものについては、私はむしろ報道しない方がよいと思っています。すべてワクチンが原因で死亡したような誤解を招くためです。

 その上で、次に問題となってくるのが比較の「質」です。

 ――質が高い比較とはどのようなものですか。

 最も質が高いのは、製薬企業が薬やワクチンを販売する前に、効果や安全性を確かめる最終段階の臨床試験(治験)です。ファイザーなどが開発した新型コロナのワクチンでは、数万人を対象に、本物のワクチンを打つ人と偽薬を打つ人をくじなどで分け、安全性と効果について検証しました。多くの国では、この治験で合格しないと市販されないという仕組みになっています。治験は、実験室の中でする研究のように、明確な比較対象をつくることができるため、結果の妥当性が高いとされています。

 一方、実際に多くの人々へのワクチン接種を開始してから、その効果をみるという場合には、あらかじめ比較対象を設定しておくことができません。そのため、完全ではないものの、できる範囲で比較できる対象を設定します。

 ――最近発表された「高齢層の感染者が減った」というイスラエルからのワクチンの効果についての報告をどう見ていますか。

 ファイザーによるワクチンの…

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