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 きっちりと計画を立てて物事を進めるはずだったのに、急な案件で予定変更を迫られることがありますよね。計画が少しでも崩れるだけで、当初のやる気がそがれてしまったこともあるかもしれません。どうすれば不測の事態をうまく乗り切れるのでしょうか。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

「特急案件」が発生したら…

 ずっと前から、「やらなくちゃなあ」と思っていた部屋の片付け。どうにか「今日の10時からするぞ」と固く決意していたのに、今日に限って快晴で、しかも今日に限ってめったに会えない友達にいちご狩りに誘われた。こんなビッグチャンスが同時に訪れるのが人生です。他にも体調が悪くてどうしても手をつけられなかったり、緊急の仕事が入ってそれどころではなくなったり。

 私たちはそんな時、決意がくじかれがちです。優先順位のどうしても低くなる「長期的な視点に基づく、いわゆる夢の実現に必要な行動」は後回しになるのです。そうした「特急案件」が発生した時、夢への行動をどう進めていくかについて紹介します。

 前回までにADHDの主婦リョウさんは、夢である「緑に囲まれた暮らし」を実現させるために、週間目標である「近所の花屋でズボラな自分でも枯らさない観葉植物について相談する」計画を立てました。その結果、以下の二つを木曜の午前中に計画したのですね。

 □近所の花屋をネットで検索(1時間)

 □その花屋に行って相談する(移動合わせて、2時間)

 この木曜が楽しみで、リョウさんは水曜に翌朝の食事用の冷凍ピザを買って、食器洗いを夫にお願いしておいて、木曜に楽しみにしているドラマの録画予約もしておきました。

 いつもなら、「家事しなくちゃなあ」と思いながらテレビをダラダラ見てしまうリョウさんですから、これだけ段取りをうまくできる自分にほれぼれするほどでした。

 なのに、木曜の朝、娘を起こす時に、悲劇は始まりました。

拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

 リョウ「ねえ、起きて」

 娘の頰に触れたとたん、リョウさんは娘が熱のあることに気づきました。しかも、一瞬でわかるほど高熱でした。学校を休ませることにしました。

 幸いなことに娘は、午後からは熱も下がり元気になりました。次の日からは学校に行くこともできました。

不快な「時間に追われる」感覚

 しかし、リョウさんは、これでペースが崩れた感じがしたのです。

 木曜の午後にすべきだったことや、ドラマの録画をみる時間もなかったことなど、予定通りいかなかったことが、金曜以降に押し寄せて、「時間に追われる」感覚になったのです。

 一度崩れた計画を元に戻して、時間に追いつくのは至難の業。おまけに、この負債を支払わされている感覚は、焦るし、気持ちのいいものではありません。

 がんばってもマイナスをせいぜい0に戻せるだけの作業は、報われない気持ちになるものですよね。リョウさんはすっかりやる気をなくしてしまいました。

 リョウ「そうそう、しょせん、私には観葉植物なんて高嶺(たかね)の花なのよ」

 いじけてしまっています。まるで夏休みの宿題を計画通りにできない小学生が、夏休み最終日に、泣きながら「そもそも計画なんか立てなきゃよかった! 私には無理ー」と口をとがらせているようです。

 リョウさんのこと、ひとごとじゃありませんよね。がんばってダイエットしている最中に飲み会があったり、バイキングなんかに誘われたりすることを想像してみてください。その日だけたくさん飲み食いして終わりで、「なんてことなかった」と割り切ってもいいかもしれません。それなのに、その日をきっかけに「ああ、たくさん食べすぎた。ダイエット計画が台無しだ」と思い、緊張の糸が切れたように、やけ食いとなってしまうかもしれません。

事前に妥協案を

 こうした不測の事態にはあらかじめ備えておくのがよいでしょう。

 予備日を設けるために4週目の目標をあえて「なし」にして予備に当てるのもいいでしょう。また、計画通りのAプランに加えて、時間短縮妥協のBプラン、質を落としたCプランなど数多くの妥協案を作っておくことです。

 リョウさんは妥協案プランでいきますよ。

 リョウ「よし、んじゃ、土曜に家族で花屋に行こう。ね、みんなつきあって! その花屋の近くにおいしいランチのお店があるから、帰りに食べよう」

 ほんとは一人で花屋に行って、たくさん質問して植物をじっくり選びたかったのですが、家族を巻き込んでレジャーにしました。妥協案にしてはずいぶん楽しそうですね。

 ポイントは、やむを得ず計画変更になる「前」に、妥協案を考えておくことです。「後から」ですと、どうしてもがっかり、放り出したくなるからです。備えあれば憂いなしですね。

 ◇3月6日(土)朝7時からこのコラムの筆者が主催するオンラインで働く人のための時間管理グループが始まります。ぜひともご参加下さい。(https://worktimemana3.peatix.com/別ウインドウで開きます

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。