思考停止招いた「安全神話」 原発事故に3つの想定外

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聞き手 編集委員・吉田伸八
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 原発は過酷事故には至らない――。そういう「安全神話」にすべての関係者がとらわれていた。当時、危機管理審議官として官邸で対応にあたった高橋清孝さんはそう省みる。

 ――東日本大震災の時、内閣危機管理監のもとで政府対応の実務を担当していました。災害や原発事故への備えはどうでしたか。

 地震、豪雨などの自然災害や航空機などの大規模事故、テロやハイジャックなどの事件、尖閣諸島に関する事案などについては、対応方針やマニュアルを整理していました。ただ、原子力災害についてはほとんど未整理で、手が回っていませんでした。

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 ――日頃の訓練は、具体的想定をふまえたものでしたか。

 大規模な自然災害については、内閣官房の安全保障・危機管理室(安危室=当時。現在の事態対処・危機管理担当)と内閣府の防災担当が中心となり、日常的に検討や訓練を繰り返していました。現実に起きた事案などをふまえて想定を作り、習熟と改善を図っていました。

 原子力災害も気にはなっていて、原子力安全・保安院(当時)の担当者を呼んで基礎的な勉強はしていました。原子力災害対策特別措置法に基づいた訓練も毎年行っていました。

 前年の12月ごろ、静岡県浜岡原発で事故が起きたとの想定で官邸に対策本部を作り、菅直人総理らも出席した訓練をしました。大きな地震が起き、原発の全電源が喪失したとの想定です。ただ、それ以上の事態にはならず、過酷事故に至る直前で収束するというシナリオでした。保安院も「ちゃんと止まる」ということでした。

 東日本大震災の2週間ぐらい前には、私の発案で、安危室として初めて原子力災害自然災害の複合災害を想定した図上訓練を行いました。前年12月ごろの訓練と同じような想定だったと思います。どちらの訓練も、原子力災害対策特措法に基づく通報が事業者からあり、緊急事態宣言を出す、その手続きの流れを確認する内容でした。

 ――実際には、訓練の想定を大きく超えた事態になりました。

 いま振り返って、なぜ準備していないのかと聞かれると、反省はあります。ただ、当時は優先順位は自然災害への対応のほうで、あれほどの原子力災害が起こるとは思っていませんでした。

 内閣危機管理監の制度は、1…

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