今年は地球環境の未来にとって極めて重要な年だ。世界が「脱炭素」へと動く中で、特に米中両超大国の動きが注目を集めている。米国ではバイデン新政権が発足し、これまでとは正反対の環境重視にかじを切る。世界最大の温室効果ガス排出国の中国は昨年、二酸化炭素(CO2)排出の「2060年実質ゼロ」を表明した。朝日新聞と東京大学未来ビジョン研究センターは1月、「2021年、米中はどう動く」と題してオンラインセミナーを開いた。高村ゆかり・東京大学教授と、香取啓介(ワシントン)、冨名腰隆(北京)の両記者による報告の抄録を紹介する。
拡大するパリで2020年12月10日、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の5周年を記念して観光名所エッフェル塔の前でデモをする人たち=ロイター
高村教授はこれまでの地球温暖化をめぐる動きについて触れ、米国は昨年11月にパリ協定から脱退したが、バイデン次期大統領は就任と同時に復帰予定と説明(実際、2月19日に正式復帰)。米国が加わると主要7カ国はすべて「50年実質ゼロ」を掲げることになる。世界はすでにカーボンニュートラル(脱炭素)に向けて動いており、欧州連合(EU)は30年の温室効果ガス削減目標を1990年比「55%」、英国は「68%」に引き上げた。中国も「60年実質ゼロ」に加えて、30年目標を引き上げたという。「感染症の影響があっても、気候変動をめぐる議論や動きは加速していく」と指摘した。
米新政権は一転して環境重視
香取記者は、トランプ大統領は「地球温暖化は中国のでっち上げ」などと言い、科学の否定や化石燃料への後押しを進めたものの、この4年間にも米国のCO2排出は減少し、自治体や企業、市民の意識が「脱炭素」へと向かっている状況を報告。「気候変動」は、バイデン次期大統領の四つの重点政策の一つだが、ほかの重点政策である「新型コロナ対策」「経済回復」「人種間の公平性」にも、雇用回復やグリーンインフラ投資、気候正義など温暖化対策の視点が盛り込まれていると話した。
外交面では「パリ協定への復…
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