知らぬ間に起こされた裁判で差し押さえ 記者が追った謎

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倉富竜太
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 2月8日、記者は大分市内の住宅街を訪れた。

 繁華街から10分ほど歩いたところにある3階建て集合住宅。

 飲食店経営の女性の住居とされた部屋は、ポストからチラシがあふれ、チャイムに応じる人はいない。

 女性の親族や知人も住んだことはないという。

 「サシオサエ」

 昨年10月、女性の預金通帳にこの5文字が記帳された。

 女性が相談した弁護士が裁判記録をたどり、知らない裁判で敗訴していたことが分かった。

 なぜか住んだこともない部屋が女性の住所とされたことが差し押さえにつながっていたことも判明した。

元従業員が

 訴状や女性側の弁護士によると、民事訴訟を起こしたのは飲食店の元従業員の男性。30日以上前の予告なしに解雇されたとして、2019年6月に解雇予告手当金などを求めた訴訟を熊本簡裁に起こした。

 簡裁は男性が申告した女性の住所へ訴状を送ったが戻ってきた。

 男性は女性が暮らす証しとして「電気や水道のメーターが動いている」と記した書類を提出。その後、簡裁は訴状を、発送した時点で届いたとみなされる「付郵便(ふゆうびん)送達」でその住所へ送ったという。

 その住所が、例の3階建て集合住宅のある場所だった。

 訴状は女性のもとには届かず、裁判を知らなかったので出廷せず、19年8月に68万円余の支払いを命じる判決が出た。

 男性は判決に基づき、大分地裁に債権差し押さえを申し立てた。その際も同じ住所を申告した。

使わない異体字

 大分地裁も、差し押さえ命令をその住所へ送った。

 女性側の弁護士によると、差し押さえ命令は大阪市で受け取られた。

 受取時の女性のものとされる署名もあったが、姓名の一文字は女性が使っていない異体字で書かれていた。

 大阪の住所には男性の住民票がある。

 「真相はわからないが」

 そう前置きした上で弁護士は…

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