受験は成長する機会、結果は天に任せて 豊島岡女子校長

校長から受験生へ

聞き手・柏木友紀
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 入試シーズンが本格的に始まりました。コロナ禍の中で頑張っている受験生たちへ、校長たちからの言葉をお届けします。

校長から受験生へ:豊島岡女子学園中高・竹鼻志乃さん

 「人事を尽くして天命を待つ」。今年、本校の高3生には、この言葉を贈りました。入試は時に本当に困難で、諦めてしまおうかと思うこともあるでしょう。力が100%発揮できない場合もありえます。それでも、日々の努力で計画性や忍耐力が育ち、自分自身と向き合うことが出来たはず。さらに、学ぶことそのものの楽しさを感じる域まで自分を高め、充実感や達成感も味わって欲しい。

 教科書に載っている、すぐに役立つ知識は、時に古くなるかもしれません。しかし、自分なりに身につけた学ぶ姿勢、学び方は生涯の礎となります。それは自信ともなり、社会に出て様々な困難に出合った時に乗り越える力にもなるでしょう。受験は人生の中で、そう何度もない貴重な成長の機会です。「出来る限りのことはやり尽くした」と胸を張ることができれば、結果は天に任せることです。

 そう考えると、大学受験は高3生にとっての学年行事のようなもの。本校では受験生を特別扱いはしません。毎年、10月の運動会では高3生がリーダーシップを発揮しますが、今年は、埼玉県にあるグラウンドでの全校運動会は出来ませんでした。それでも高3生が分散型のスポーツ大会を企画し、中間報告や動画の配信など様々に盛り上げてくれました。制約があるからこそ工夫し、「全校で楽しむ」という本来の趣旨を変わらず示してくれました。

 今回、初めて行われた大学入学共通テストも同じ。試験の方式が変わり、相応の工夫は必要ですが、努力すべきこと、学ぶべきことの本質は変わらない。探求的に自ら学ぶ力を育て、それを測るという入試改革の方向性には賛同します。

 やれるだけのことを終えたら、あとは集中力です。本校では中1から6年間、毎朝5分の「運針」の時間があります。部活の朝練や試験で慌てていようが、いつもと同じく布に向かい、針を進める。無心で縫うことだけに集中し、平常心を鍛えます。裁縫の基本は運針。物事は基礎が大切です。

 コロナ禍で休校した際、私も卒業生の教員と共に運針を行い、オンラインでも配信しました。受験会場に運針道具をお守り代わりに持って行く生徒もいます。実際に縫い始めると、周囲に驚かれたという笑い話もあります。

対談「中学受験、どうしよう?」

小学生の子どもに受験をさせていい? させるにしても親が気をつけなくてはならないことは? 教育ジャーナリスト・おおたとしまささんと、中学受験経験者の時事YouTuber・たかまつななさんを招いた対談を、3月28日、オンラインでお伝えします。

 最後に、運を天に任せた後は、結果がどうであれ引きずらないこと。第1志望に執着しすぎるのも考え物です。むしろ第1志望に入れる人の方が少ないのですから。特に中学入試では、本人よりも保護者が諦め切れず、それが生徒のトラウマになったり、過度な期待につぶれそうになったりするケースも見られます。

 進学した学校が結局は1番。保護者も「ご縁があったのね」と温かく送り出してほしい。そこでは新たな出会いがあり、また奮起することもできる。少しでも早く新しい生活に慣れ、胸を張って自分自身の道をしっかりと歩んでください。(聞き手・柏木友紀)

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〈たけはな・しの〉1966年生まれ、埼玉県育ち。豊島岡女子学園高から筑波大学第二学群生物学類へ。「味の素(株)中央研究所(当時)」に勤務後、93年に理科教員として同校に着任。2013年から現職。同校128年の歴史で初の卒業生校長。