横浜市大発のビール、今年も コロナ禍でもバトンつなぐ

岩本修弥
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 【神奈川】横浜市立大学発のクラフトビールが、今年も発売される。コロナ禍で一時はビールづくりが危ぶまれたが、学生たちがクラウドファンディング(CF)で資金を集め、発売にこぎつけた。

 麦の遺伝子研究で知られる同大学・木原生物学研究所(横浜市戸塚区)。その近くに広がる約16アールの畑で、3人の市立大生が麦の栽培にいそしんでいる。昨年12月中旬に芽が出始め、2カ月で15センチまで成長した。

 学生たちは定期的に麦踏みをする。麦を踏むことで根っこがしっかりと張るからだ。畑に通う鈴木悠斗さん(理学部3年)は「おいしいビールを飲んでもらうために頑張りたい」。例年、収穫期の5月末には高さ1・2メートルまで育つという。

 同研究所では、畑で栽培した大麦でビールをつくるプロジェクトを続けている。ビール製造は厚木市地ビール会社サンクトガーレンが担い、「KORNMUTTER(コルンムッター)」の名で17年から販売してきた。名付け親は同研究所の坂(ばん)智広教授(植物遺伝育種学)。「コルンムッターはドイツでは穀物の精霊として知られ、『麦の母』という別名がある。麦と学生の成長を見守ってほしいと思い名付けた」と言う。

 例年5月末に麦を収穫しているが、昨年の春はコロナ禍で学生の通学が制限され、収穫の適期を逃してしまった。地元農家の協力でなんとか6月末に収穫できたが、畑の手入れが十分にできなかったことでビールの原料となる麦芽がつくれず、廃棄せざるを得なくなった。坂教授は「代々、学生たちがビールづくりのバトンをつないできただけに、ショックでぼうぜんとしました」と振り返る。

 学生たちは一時ビールづくりを諦めかけたが、なんとしてもバトンをつなごうと、活動資金を募るCFを昨年12月に立ち上げた。学内外から寄付金が集まり、1カ月も経たないうちに目標額の60万円を突破。最終的には約90万円が集まった。

 今年は、15年に収穫して冷蔵庫に保管していた小麦を使って麦芽をつくり、それを原料にビールをつくることになった。麦畑の手入れに関わってきた高橋完治さん(理学部3年)は「先輩たちと同じようにビールづくりができてうれしい。自分たちも後輩のためにバトンをつなぎたい」と話す。

 今年のビールは桜の花や葉からうまみを抽出した「桜餅風味」という。約5千本(1本330ミリリットル)製造し、3月中旬に発売予定だ。販売はサンクトガーレンのサイト(https://www.sanktgallenbrewery.com/別ウインドウで開きます)などで。問い合わせは同社(046・224・2317)か同研究所(045・820・2404)へ。(岩本修弥)

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