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 大阪府東大阪市に、地元の農産物を使った菓子作りにこだわる和菓子店がある。父親の急死で突然店を任され、悩みながら和菓子に向き合う中で生まれた「地元への思い」は強い。

 近鉄奈良線若江岩田駅にほど近い東大阪市若江本町1丁目の「白穂(しらほ)」。町屋風の店内で扱うイチゴ大福のイチゴ、みたらし団子のしょうゆ、秋に出すスイートポテトのサツマイモはいずれも「東大阪産」だ。

 「すぐピンと来ないかもしれませんが、市内においしいものがたくさんある。地元優先でなく味優先で選んだ結果です」。店主の新沢貴之さん(41)は話す。

 地元産の最大のメリットは新鮮さだ。例えば市販のイチゴはまだ青いうちに収穫して出荷されるのが一般的だが、白穂が使うのは近くの川浦農園(東大阪市七軒家)が収穫したての赤いイチゴだ。新沢さんは「自分で生産者と顔も合わせられるし、利点が多い」。

 店は1981年に父が創業した。2代目の新沢さんは「地元にそれほど思い入れはなかった」と明かす。

 高校卒業後、東京に修業へ。まもなく父が急逝し、20歳そこそこで店を任された。常連客に支えられつつ必死に菓子の勉強を続けたが、経営に苦しんだ。「もっと客が多いところに移ったほうがいいか」と考え、大阪市内の繁華街に物件探しに行ったこともあった。

 つきあいがある税理士に頼んで経営を勉強した。それまで職人の感覚に頼っていた菓子のレシピを、外気温や水分量によって細かく数値化し、「おいしさの理屈」を突き詰めた。

 ようやく店が軌道に乗り、地元の人とのつながりが増えると、身近においしい野菜や果物が多くあることを知った。「東大阪を知らなすぎた」。東大阪市のJAグリーン大阪も農家とつないでくれた。JAの森田耕司直売課長は「和菓子を通して質の高い東大阪の農産物を多くの人に知ってもらいたい」という。

 白穂にイチゴを卸す川浦農園の川浦慎太郎さん(39)は広さ計約2千平方メートルのハウスでイチゴを育てて9年目になる。湿度、温度を細かく調整しながら味を追求してきた。「新鮮さやおいしさを考えたら地産地消が最適」と販売先は府内だけに限っている。

 川浦農園の特大イチゴを使った白穂のイチゴ大福は1個で税込み1080円だが、予約でほぼ完売する。「気持ちを込めてつくったイチゴを和菓子の技術でさらに高めてもらっている。買いたいという人が多いと聞いてうれしい」と川浦さんは喜ぶ。

 新沢さんは「和菓子は古くさいというイメージを変えたい」とSNSを使った発信を続ける。昨年9月には東大阪市中石切町5丁目に2店舗目を開いた。「将来は府外にも広げられたらという夢はあるが、いつまでも東大阪を大事にする気持ちに変わりはありません」(染田屋竜太)

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