「ウシジマくんの次、作れるか」 真鍋昌平、新作語る

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土井恵里奈
【動画】新作漫画「九条の大罪」などについて語る真鍋昌平さん=土井恵里奈撮影
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 闇金ウシジマくんの次は、危ない弁護士。黒社会の事件を請け負う法のプロは、神か悪魔か――。

 国民的ダークヒーロー「ウシジマくん」で知られる漫画家・真鍋昌平(まなべしょうへい)さん(49)の新作「九条(くじょう)の大罪」の単行本が、26日に発売された。主人公の弁護士が「暗躍」する法とモラルの極限ドラマについて、真鍋さんが語った。

 聞き手は、テレビ東京の上出遼平(かみでりょうへい)プロデューサー(32)。世界各地の闇の住人の飯を見せるテレビ番組「ハイパー ハードボイルド グルメリポート」(テレビ東京)を手がける名物PDです。ロストジェネレーション世代と平成元年生まれ、どちらもタブーな世界を描く2人が語る、善と悪、今の世の中に必要なものとは。

真鍋昌平 1971年生まれ。漫画家。1998年、「憂鬱(ゆううつ)滑り台」でデビュー。2004年にビッグコミックスピリッツで連載の始まった漫画「闇金ウシジマくん」は、金に人生を狂わされる人たちのリアルな描写が話題となり、ドラマや映画にもなった。第56回小学館漫画賞(一般向け部門)、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門ソーシャル・インパクト賞受賞。

上出遼平 1989年、東京生まれ。2011年にテレビ東京入社。ネットフリックスでも放送中の人気番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」プロデューサー。海外での取材はヤバすぎて大勢のテレビクルーでは入れず、1人で行う。右手にハンディカム、左にゴープロ、首から一丸レフ、背中にドローンと計4台のカメラを駆使して撮影する。

上出 「闇金ウシジマくん」を15年やって、ついに「九条の大罪」が始まりました。1話目を世に出す時は、どんな気分でしたか。

真鍋 ウシジマくんは、続けようと思ったら続けられた。ある作品を長く描いている漫画家に相談したら、「絶対やめない方がいい」と。ただ、慣れてしまうとどうしてもそれ以上の自分を発揮できない。自分自身が腐ってしまうから、すべてを捨てて、一から作り上げようと思いました。

上出 ウシジマくんをやめてから新作まで、どれくらい時間がかかりましたか。

真鍋 1年半ほど。「作れるかな?」ってやっぱり思いました。朝起きると昨日と変わらない1日が始まり、落ち込んでいく……。だめだと思いたくないからお酒を飲んで。泥酔して、路上でよく寝ていました。

上出 ウシジマくんのテーマは闇金でしたが、「九条の大罪」は弁護士が主人公。一見、逆に見えますが。

真鍋 ウシジマくんで(一家が次々に)洗脳されていく話を描いたことがあったんです。九州の事件(監禁された身内同士で暴力が繰り返された北九州監禁殺人事件)をベースにしていたんですが、誰もついてきてくれなくて。「見たくない」と言われた。

 でも、例えば弁護士とかのフィルターを通せば、もっと見てもらえたんじゃないか。人間の奥深くを描けるのではと思ったんです。

上出 ということは、ウシジマくんより深い世界を描こうとしてるんですか。

真鍋 幅は広がると思う。

「九条の大罪」 真鍋昌平の最新作。ビルの屋上でテント生活をしている偏屈な弁護士、九条間人が主人公。顧客は半グレ、ヤクザ、前科ありといった人間ばかりで、引き受けるのも厄介な案件ばかり。救世主か、はたまた外道か、法とモラルのせめぎ合いを描く。ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中。

豊富な取材が支えるリアルな描写

真鍋 一つのテーマで多い時は40~50人、(漫画家としてトータルでは)1千人以上に会っています。

 でも大切なのは、どれだけ印象に残るか、考えさせられるか。最初はその分野に詳しい人に会い、さらにその知り合いに会って。面白いと思えば何度も会います。取材対象の人だけではなく、周りにも取材をして、本当のことが少しずつ分かっていく感じ。時間がかかっちゃうのはそういうところです。

■善悪のあいまいさ…

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