夜。人目をはばかり、寮からコンビニに向かう。
選ぶのは、スティックパンやドーナツ、パスタ、カップアイスクリーム、せんべい、スナック菓子……。安くて量が多い食料だ。毎回、3千円ほどを使う。
昨年まで陸上競技の強豪大学で長距離選手だった女性には、そんなことが週に2、3度あった。水曜日や土曜日にある体重測定日の前後が多かった。
自室で、買い込んだものを次々と口に運ぶ。
「痩せなければ」の強迫観念の一方で、食べたい欲求が猛烈にせり上がってくる。
「これで2千から3千キロカロリーくらいか」
すべてをのみ込むと、トイレにかがみ込み、右手の指を口に突っ込む。あえて水分を多くとりながら食べたのは、このためだ。
「これで体重は元通りになる」
そう言い聞かせながら、嘔吐(おうと)するのだった。
「部の監督は体重管理に厳しい」という。
「調子が悪いと、『それはお…
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