[PR]

 夫婦同姓か別姓か選べるようにする「選択的夫婦別姓」の導入を国に求める香川県内初の意見書が昨年12月、三豊市議会で可決された。陳情を出してきっかけをつくった市内の弁護士佐藤倫子さん(45)は「旧姓使用の限界を痛感した」と話す。同じく仕事で旧姓を使う朝日新聞高松総局の桝井政則総局長(52)と思いを語り合ってもらった。(聞き手・多知川節子)

 ――結婚で改姓し、その後も旧姓を使う理由は

 佐藤 事実婚の選択肢は考えていませんでした。私は結婚しても佐藤倫子のままでいたかったですが、相手に佐藤になってほしいとは少しも思いません。姓を変えてもらいたいというニーズが高かったのは、いわゆる本家の長男にあたる彼の方でした。

 桝井 記者としてのテーマにフェミニズムがあり、自分の結婚に際し、改姓を実体験したいと興味がありました。朝日新聞は旧姓使用が可能ですが、地方公務員の妻は認められていませんでした。互いの姓を使い続けるには僕が変える方が合理的でもありました。

 ――旧姓使用に不便や不利益を感じることは

 佐藤 日本弁護士連合会が規定する「職務上の氏名」として、結婚後の14年間も旧姓を使っています。弁護士名簿や身分証に載るのはこの名前ですが、確定申告はもちろん、成年後見などの登記も戸籍名でなければできません。これでは口座を作れない銀行もあります。

 職務上の氏名は女性弁護士の4割が使っており、そのあり方を考える日弁連のワーキンググループで座長も務めていますが、壁が多く限界を痛感しています。

 桝井 パスポートや銀行口座の名義変更は確かに大変でした。ホテルの予約は仕事の出張なら桝井、家族旅行なら戸籍名、と使い分けていますが、正直ややこしい。飲食店など、どちらの名前で予約したかわからなくなる時もあります。

 佐藤 わかります。その都度、通称でいけるか気にしたり、お願いしたり、相手に手間をかけさせたりすることに疲れ果てました。10歳の娘が幼稚園の頃、「ママはなんでパパにみょうじをゆずったの?」と聞いてきましたが、答えられませんでした。せめて娘が結婚する時には選択させてあげたいと思っています。

 夫婦同姓を強制することで、日本国憲法が否定したはずの「家制度」があたかも残存しているかのような錯覚を国民に与えている問題もあると思います。

 ――地元議会に陳情を出した経験を振り返ると

 佐藤 全国で陳情アクションが広がるなか、三豊市と、弁護士事務所を置く丸亀市の議会に昨年、陳情を出しました。丸亀は議会運営委員会の段階で不採択に。三豊では、私の陳情と市議が出した意見書が、ともに賛成多数で採択・可決されました。

 継続審査になるかと思っていたのに一発採択で驚きました。賛成の立場で討論に立った議員は「この問題について知識はなかったけれど、陳情を受けて勉強した」と話していました。市民が声を上げることで議員の目の前に問題が立ち上がり、考える良い機会になったのだろうと思います。

――政府が昨年12月に策定した第5次男女共同参画基本計画では「選択的夫婦別氏(別姓)制度」の文言が削られ、議論の後退も懸念されます

 桝井 法律婚の96%で女性が改姓している現実を見ると、やはり男性が「自分の人格や属性が乗っている姓を変えたくない」という選択をしているのでしょう。ただ、自分の姓を押しつけてしまう暴力性に違和感を覚える若い世代も増えていると感じます。男性が「自分ごと」としてとらえる契機がどこにあるだろうか、と考えています。

 佐藤 三豊市が性的少数者のカップルを公的に認めるパートナーシップ宣誓制度を昨年導入したのも、市内の同性カップルが婚姻届を出して不受理とされたのがきっかけで一気に進みました。当事者が困っていることを為政者や行政に伝えれば、案外変わるかもしれないという希望は感じています。

関連ニュース