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 サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏が2018年に殺害された事件をめぐり、米国家情報長官室は26日、サウジのムハンマド皇太子が「承認した」と結論づけた調査報告書を公表した。バイデン大統領は「人権侵害について責任を問う」と発言し、米政府も事件に関与したサウジの元高官らを制裁対象に指定した。ただ、皇太子本人は対象に含めておらず、戦略的同盟国のサウジとの決定的な対立は避けた形だ。

 サウジ政府に批判的だったカショギ氏は、18年10月にトルコのサウジ総領事館内で殺害された。公表された4ページの報告書は皇太子について①17年以降、サウジの治安・情報機関を完全に掌握した②側近や、自身の守護部隊メンバーが事件に関わった③海外の反体制派を沈黙させるため、暴力的手段の使用を支持した――などの点を挙げ、「カショギ氏を拘束または殺害する計画を承認した」とした。また、「皇太子の承認なく、サウジ当局者がこのような作戦を実行した可能性は極めて低い」と述べた。

 報告書の公表を受けて、米財務省は事件に関わったとされるサウジの元情報機関高官らの米国内の資産を凍結した。ブリンケン国務長官は26日、カショギ氏を含む海外の反体制派への脅迫などに関わったとされるサウジ人76人のビザ(査証)を制限すると発表した。

 バイデン氏は25日にサウジのサルマン国王と電話協議をしており、26日は米テレビのインタビューで「国王にルールは変わっていると明確に伝えた。今日と月曜(3月1日)に重大な変更を発表する。人権侵害について責任を問う」と述べ、さらに制裁などを科す考えを示した。

 ただ、米国は皇太子本人への制裁には踏み切らなかった。サウジ国内に米軍が駐留し、対イランなどで重要な同盟関係にあることを考慮し、決定的な関係悪化を避けたい判断があったとみられる。

 サウジ側は報告書に猛反発している。国営通信によると、サウジ外務省は「報告書に含まれる、サウジ指導者に関する否定的、虚偽、受け入れがたい評価を完全に拒否する」と声明を発表し、「不正確な情報と結論が含まれている」と主張した。(ワシントン=渡辺丘、ドバイ=伊藤喜之)