民間の知恵を活用 三宅町・生駒市、外部人材を登用

根本晃、伊藤誠
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 高い能力と専門性をもつ外部人材を登用する自治体が、奈良県内でも増えている。三宅町と生駒市は昨年から、それぞれのやり方で民間の知恵を生かし、行政が抱える課題の解決に向けて取り組んでいる。採用された外部人材も、新たな分野にやりがいを感じている。

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 「役場は発信が苦手。どうすればよいのか」

 1月下旬、三宅町役場。森田浩司町長(36)がパソコンを前に、オンライン会議に臨んでいた。

 「メディアが来た時に、相手が何を求めているのか出来るだけリサーチして、深く返事するのが良いと思います」

 そう説明するのは小林慎一郎さん(65)。朝日放送で動画配信やモバイル事業を担当する部署の部長などを務め、現在は個人でコンサルティング業を営んでいる。この日は拠点とする山梨県の自宅兼オフィスから会議に参加した。

 町は昨年12月から、会社員など「本業」の合間をぬって働く「複業人材」を登用する実証実験を始めた。広報、デジタル化、人事の3分野で、人材会社やコンサルティング会社など多様な経歴を持つ7人の力を借りる。具体的には月2~4回程度、市職員らとオンラインを中心に会議し、課題の発見や解決に取り組む。報酬は発生しない。

 この日の議題は今年迎える、三宅町のグラブ生産100周年事業をいかに盛り上げるか。小林さんら複業人材2人と町長らで議論を進めた。

 森田町長は「これから訪れる社会の変化に、今まで通りの役場だけでは対応できない」と話す。複業人材から役場では気づかない視点をもらい、職員も積極的に発言するようになったという。4月以降にメンバーを入れ替え、今後も続けていくことを検討している。

 一方、生駒市は、昨年4月、初めて「プロ人材」を採用した。採用されたのは30~50代の9人。このうち、千葉県で創業支援や教育関連事業を手がける企業を経営する尾崎えり子さん(37)は、教育指導課のキャリア教育プランナー(会計年度任用職員)として配属された。

 生駒市との縁はなかったが、「副業でもテレワークでもよい」という募集条件を知って応募した。「自分の企画力を生かして教育改革をやりたいと思った」。定期的に千葉から市役所へ通うはずだったが、コロナ禍でこれまで8回にとどまっている。

 常勤職員のようなルーチンワークはない。その代わり、課内の職員や学校の先生たちから本音を聞き出して課題をすくい、新事業の立案につなげていく。

 最近では、コロナ禍で広島への修学旅行ができなくなった市立小学校から相談を受け、「オンライン修学旅行」を企画。児童たちも巻き込んで広島電鉄や地元小学校と打ち合わせを進め、2月8日に先生たちとネット上でリハーサルをした。16日の修学旅行本番も、ネットでつなぎながら裏方を務めた。先生たちにとって、オンラインを教育に生かすことへのハードルが低くなることも期待している。

 生駒市のプロ人材は有給で、三宅町の複業人材は無給という違いはあるが、尾崎さんも小林さんも、お金や待遇を求めているわけではないという。尾崎さんは「重要なのは、自分の能力ややりたいことを、教育の課題にリンクさせることができるかどうか」。小林さんは「若い人と色々仕事をする中で学ぶことが多いし、その縁から仕事につながることもある。目先のことにはこだわらない」と話す。(根本晃、伊藤誠)