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 【和歌山】紀南の清流・古座川を河口から十数キロ上流へたどると、右手に巨大な岩山が現れる。国天然記念物「一枚岩」。約1500万年前にマグマが噴出したもの。高さ100メートル、幅500メートル。ほぼ垂直の壁面は、迫力満点だ。

 「町の大事な場所。町の魅力をアピールできるのはここしかない」。昨年6月から一枚岩の前にある道の駅兼キャンプ場「monolith(モノリス)」を経営する田堀穣也さん(34)は言い切った。一枚岩をスクリーンにした映画祭を企画し、「町を元気に」と意気込んでいる。

 町出身。大阪府の大学卒業後、和歌山へ戻り、小学校の教師や串本町の消防士を務めた。仕事に充実感はあったが、「今は見えないものが、人生にはもっとあるのでは」と思いをめぐらせていた。

 消防士時代、管内の古座川町をくまなく回った。一枚岩の向かいにあるのに、登ったことがなかった名峰「嶽ノ森山」に登頂した。町に多く残る伝承も知った。

 町へ豊かな自然を求めて、多くの若者たちが移住していた。デザイナー、民泊経営者、バラ園経営者ら。そんな移住者約20人と知り合い、語った。「住民が親しみやすい」「子育てがしやすい」と町を評価する声を聞いた。「町のよさをたくさん発見した。町を盛り上げようとやる気になった」という。

 昨年3月に消防士を退職し、6月に道の駅をオープンした。「ここを拠点に町内に雇用を増やして、町へUターンする若者を増やす」のがねらいだ。店には町民も立ち寄ってくれる。お年寄りから「昔、一枚岩をスクリーンにして映画を上映したことがある」と聞いた。町をPRするイベントにふさわしい、再現しよう、と考えた。

 昨秋、クラウドファンディングで映写機と大型スピーカーなどを買う資金を募った。県の協力もあり、目標の2倍以上の約201万円が集まった。機材をそろえ、今年3月に映画祭を予定したが、コロナ禍で延期に追い込まれた。「寄付金を店に持参し、『頑張って』と励ましてくれる町の人が多かった。熱意を感じます」。町の景観をドキュメンタリーで紹介する映画祭を今秋開催しようと準備を進めている。(直井政夫)

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