消えた売り上げ3700億円 ライブ業界は生き残れるか

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伊藤恵里奈
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 音楽ライブを支える音響や照明の人たちが、働く場が激減し、苦しんでいる。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されたとはいえ、以前のようにイベントで集客ができる見通しがたたないからだ。音楽スタジオの閉鎖も相次いでいる。

照明、音響、舞台制作…働く場失うフリーランス

 2月27日、東京都港区南青山のライブハウス「ブルーノート東京」。作家のいとうせいこうさんが、ユニット「いとうせいこうis the poet」でライブ中、会場の上部にある音響ブースを見上げて「いい音がかかっていますよね」。そして、PAエンジニアのDub Master X(ダブ・マスター・エックス)さん(58)の名前を呼んだ。演奏者や客席から、ダブさんへ温かい拍手が送られた。

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ライブ中、各種の音の調整をするPAエンジニアのDub Master Xさん

 PAエンジニアとは、ライブ会場で楽器の音や歌などを整え、最良の音を客席に届ける「音のプロ」だ。仕事はライブ当日だけでない。会場の規模や設備にあわせて機材を選ぶ準備から、機材の設営、撤収まで多岐にわたる。ダブさんは日本を代表するPAエンジニアとして、これまでDef TechやSUGIZOさんらのライブを数多く手がけてきた。

 2019年には年間2百数十日仕事が入っていたが、昨年は60日ほどだった。ダブさんは「照明や音響、舞台製作などはフリーランスが多い。一つの公演が中止されると、多くのフリーランスが食いっぱぐれる」と語る。この1年、感染症対策で客席が減った分の収入を公演回数を増やして補ったり、経費削減のために公共交通機関を利用せずに、車を長時間運転して全国のツアー会場をまわったりしたという。コロナ禍で不要不急の外出自粛が強調される中、「何十年も誇りをもって仕事をしてきたが、世の中から必要とされていないと感じた」。

 CDの売り上げ減に反比例するように、ライブ市場はこの10年ほどで規模を急拡大していた。ぴあ総研によると、音楽業界だけで19年は過去最高の4237億円。2010年と比べて2・5倍以上になった。だが、コロナ禍で音楽イベントの中止や延期、入場者制限が相次ぎ、昨年2月から今年1月までの間、入場料の売り上げだけで3700億円が消えたと推計する。

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