琉球国王の行列、模して行進 興味津々で駆け出す子

沖縄タイムス・城間有
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 戦前の沖縄の人や風景を写した写真165枚が、朝日新聞大阪本社(大阪市)で見つかった。戦前の沖縄の写真は戦災で多くが失われ、まとまった形で見つかるのは珍しい。その中から選んだ写真を紹介する。

 「ハチマチ」と呼ばれる冠をかぶって琉球王国の役人に扮した人々が、大きな旗や傘を持って行進している。沿道の人たちは興味津々といった様子で、行列に沿って駆けだす子どもの姿も見える。

 1930年12月12日に、沖縄県立第一中学校(現在の首里高校)が創立50周年記念で、琉球国王の「御三ケ寺参詣(さんけい)行列」を模して実施した。

 同校学友会と同窓会が発行した雑誌「養秀(ようしゅう)」によると、教職員や生徒100人余りが参加した。実際に国王が乗ったかごやウランサン(御涼傘)などの道具、衣装を、最後の国王・尚泰(しょうたい)の末裔(まつえい)である尚家が貸したとある。

 王国時代、琉球国王は正月の3日に、首里城周辺の天界寺、円覚寺、天王寺を参詣した。王国が明治政府に廃された「廃琉置県」から51年後。一中の行列を見ようと集まった人で「蟻(あり)の這(は)い入る余地さえ余さぬ大混雑」となったという。

 午後4時半に同校グラウンドを出発。守礼門をくぐって円覚寺に向かう途中で撮影されたとみられる。絢爛(けんらん)豪華な道具に、響く中国風の路次楽(ろじがく)。「養秀」の記事は人々の感動を伝えている。「見よ十万の観衆はセキとして声なく、老爺(ろうや)老婆は土下座して有難涙を流して拝んで居る状態を!」

 この時の行列を元に戦後、「古式行列」が再現され、首里城で11月3日に行われている。主催する首里振興会の嘉陽田詮(かようださとし)事務局長(70)は写真を見て、「人々は廃琉置県で東京に連れて行かれた王の姿を重ねていたのではないか」と話した。(沖縄タイムス・城間有)

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