「全力でサボって効率化」 仕事のゴールは見えてくる

中島美鈴
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 新年度が始まりました。就職や異動などで新しい環境で忙しくされている方も多いのではないでしょうか? そんなときこそ、スケジュール管理をしっかりして乗り切りましょう。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

仕事の圧縮が苦手、どうすれば

 このコラムでは、ガントチャートを使って複数のプロジェクトを管理していく方法をお伝えしています。

 しかし、ガントチャートは挫折率が非常に高いことでも知られています。それは次のような、いくつかの失敗パターンがあるからです。

 失敗パターン1:どんな作業をすればいいかわかりにくい「To Doリスト」。

 失敗パターン2:すべてのプロジェクトが書き出せていない。

 そして今回は「失敗パターン3:プロジェクトの圧縮が苦手」を取り上げます。

 ケイさん(30代不動産会社営業職、男性)は残業時間が多く、疲れ切っています。

 毎年この時期は忙しいのですが、とはいえ、自分の部署の皆が帰宅しても、ケイさんだけが残って仕事をしているのです。

 ケイ「どうしてみんなは早く帰れるんだろう? 仕事の量はそんなに変わらないはずなのに。俺だって、別にサボっているわけじゃないのに」。

 さて、どうしたらケイさんは早く帰れるのでしょうか?

 ケイさんはそれぞれの顧客に対して、メールでさまざまな提案をして、実際に物件を案内して、契約書を作成するという流れがあるようです。

 ケイ「この予定通りに進めばいいんだけど、実際はどんどんずれていって、お客さんから『あのメールの返事はまだですか』っていつもクレームがくる」。

 なかなか予定通りには、進行していないようです。

 確かにケイさんは忙しくて、仕事時間中は精いっぱい集中しています。でも仕事がその時間枠に入りきれないのです。だからといって、会社はエリア担当制かつ人手不足なので、誰かに手伝ってもらうこともできません。

 上司からも、「前の担当者はこのぐらいこなしていたのに、君は仕事が遅い」と言われる始末です。

 では、ケイさんがどんなふうに顧客へのメール、物件案内、契約書作成をこなしているのかもう少し詳しくみてみましょう。

 ①ケイさんは顧客ごとに、新規作成でメールを作っているので、時間がかかる。

 ②顧客のニーズを十分に聞き取らずに、見切り発車であれこれ提案するので、顧客からのリクエストが五月雨式に出てきて、そのつど提案を変えなければならず、終わりが見えない。

 ③物件案内の際に、事前に経路の計画を立てずに回り始めるので、動線が悪く、あちこち多く移動して時間がかかる。

 いろいろ省略するポイントが見えてきましたね。

仕事の省略ポイントを見つける

 ケイさんはこれらを先輩から指摘されて気付くことができました。先輩はそれぞれの改善案も教えてくれました。

 ①【改善策】似たような案件の送信済みメールを土台にして編集すれば、時短になる。

 ②【改善策】十分に時間をかけてヒアリングする。およその期限を決めておく。

 ③【改善策】事前に経路の計画を立てて出発する。

 ケイさんのように、親切な先輩に恵まれて指摘してもらえればラッキーですが、職場によってはそうしたサポートがないところも多いでしょう。

 ご自身の仕事に無駄に気づくための圧縮ポイントは次のとおりです。

 1:仕事のゴールがはっきりと映像で見えていますか?

 ケイさんは、顧客へのニーズのヒアリングが雑だったので、ゴールがあいまいでした。

 「築年数がたっていても、アクセスがよければOK」という顧客の意見も、築10年を古いと思う人もいれば、新しいという人もいます。

 「アクセスがいい」のは地下鉄の駅からの距離感なのか、バスなのか、徒歩何分までが近いに入るのかなどいろいろツッコミどころがありますね。

 同じように、上司や取引先のゴールイメージを十分に聞き出して、自分の理解とすり合わせることに時間をかける必要があります。

 そうしないと、仕事を圧縮する際に、相手のどうしても外したくないポイントがわかりません。全く見当違いな仕事をすれば、やり直しに余計に時間がかかります。

 聞いたときにはわかったつもりでも、立ち止まって「仕事のゴールが映像でみえるぐらいはっきりわかっているかどうか」を確かめましょう。指示受けの時が質問のチャンスです。

 2:そのゴールに向かって仕事を圧縮。過去の似た仕事をアレンジして仕事を省略。

 自分が経験のある作業なら仕事の圧縮は比較的、たやすいでしょう。しかし、初めてする仕事なら、大変です。

 いつ、どこで、誰が、誰と、何を、どうすればその仕事のゴールに到着するのでしょうか?

 指示受けの時点で確かめておくのです。そして、「それって何か参考になる資料あるの? お金はどこからくるの? わからないところを聞ける人っているのかな? いつまでに?」など質問します。

 それから、仕事を圧縮する方法も考えます。

 ・これまで似た作業をした経験があるか、何が応用できそうか。

サボる方法を全力で考えよう

 ・部署内の人に頼むだけでなく、外注するとか、ソフトで簡単にできるとか、依頼できないか。

 ・まとめるとはかどりそうなものはないか。一般的に同じ作業はまとめた方がいい。

 ・コピー機など機械が自動でやってくれるものは先にスタートさせるなど、順番を変えると効率の上がるものはないか。

 サボる方法を全力で考えましょう。もちろん経験のある人に聞ける場合はそれが最も近道です。

 ゴールイメージが明確になったら、次にそのために何をすればいいかイメージしましょう。

 できれば、相手と「いつまでに、何を進めて、どういう方法で進み具合を報告し合うのか」まで決めておけると安心でしょう。

 具体的にイメージできれば、具体的な質問もその場でできて、相手からみれば、「この人はやる気だな」「信頼できるな」という印象を与えることができます。

 いかがでしたでしょうか?

 次回からはまたADHDの主婦、リョウさんの話に戻ります。

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中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。