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「子どもが溺れる時は静かです!」デザイナーの伝える力

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滝沢卓
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凄腕しごとにん

グラフィックデザイナー 江村康子さん(44)

 2017年秋、「子どもが溺(おぼ)れる時は静かです!!」というタイトルの絵がツイッターで注目を集めた。バシャバシャと大きな音をたててもがくのは「映画の中の話」で、実際は子ども自身何が起きたのかわからず静かに溺れて、誰も気づかない。風呂や海で溺れるのを防ぐための注意喚起で、想像とのギャップが一目でわかるデザインは、ネット上で多くの人に拡散された。

 投稿主は長野県佐久市の小児科医らが手がける「教えて!ドクター」プロジェクト。子どもの病気やけがなどの情報がわかる同名の無料アプリも提供し、ダウンロード数は現在約23万回という人気ぶりだ。熱中症や胃腸炎、虫刺されなど、症状別の自宅でのケアや受診の目安、「赤ちゃんが泣きやまない時のイライラをどうすれば」といった育児の不安もテーマ別にまとめている。

 医師やアプリ開発者ら数人の運営チームの中で、フリーランスのグラフィックデザイナーとして、文字の配置やイラストなどの「効果的な見せ方」を考える。これまでに描いたイラストはプロジェクト開始の15年秋から800点を超えた。

どんな絵なら注目されるか

 デザインの元になる情報は、医師から送られてくる文字だけ。伝えたい内容の配置や字体、どんな絵にしたら注目されるかを考え、医師ら専門家の監修も受けて形にする。「子どもの具合が悪いときに見るものが多いから、色合いは明るく。慌てているときに細かい字を熟読する人はいない。イラストで最小限の情報が伝わるようにしています」

 プロジェクトの主要メンバーで、佐久医療センター小児科医の坂本昌彦さんも「子育てに不安を感じ、どんな情報を信じていいか分からない保護者が安心できるようなデザインで、読んでみようと思ってもらえる」と信頼を寄せる。

 わかりやすさだけでなく、ジェンダーや保護者のやるせない不安など、見た人がどう感じるかにも気を配る。

 例えば「離乳食の悩み」では…

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