聖火リレー、群馬県内2日間の行程を終える

古源盛一、遠藤雄二、寺沢尚晃、松田果穂、中村瞬 柳沼広幸
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 東京五輪聖火リレーは31日、ゴール地点であるGメッセ群馬(高崎市)に到着し、群馬県内での2日間の行程を終えた。新型コロナウイルス感染防止のため、沿道の密集を避けるよう呼びかけられていたが、一部では人が密集した場所もあり、今後に課題も残った。聖火リレーの舞台は1日から長野県に移る。(古源盛一、遠藤雄二、寺沢尚晃、松田果穂、中村瞬)

 31日のスタート地点の群馬県渋川市伊香保温泉では、ランナー2人が石段街を笑顔で下り、「だんだん広場」での出発式に臨んだ。へそ踊りや和太鼓演奏が盛り上げる中、3人目の唐沢剣也さん(26)=東京パラリンピック陸上5千メートル代表(視覚障害T11)=が伴走者と一緒に下り坂を進んだ。

 広場周辺には浴衣姿の観光客も。旅館やホテルの窓からもランナーに手を振っていた。前日に家族と前橋市の祖父方を訪れ、温泉街に宿泊した東京都目黒区の大学生望月三緒さん(19)は「東京では人が多すぎて見られない。目の前で見られて感動です」。

 この日、完成からちょうど1年を迎えた長野原町の八ツ場ダム。俳優の町田啓太さんら3人が、聖火と共にダムに架かる八ツ場大橋を渡った。一般の観客は橋に入れなかったが、橋の手前に多くの人が集まった。

 県内の最終区間である高崎市。スタート地点の市役所では高崎市吹奏楽団の演奏のもと、ランナーが出発。満開の桜とともにランナーを撮影しようと、沿道に多くの人が並んだ。警備する警察官は「密にならないように、と呼びかけがあったけれど、やはり見に来ちゃいますよね」。

 ゴール後のセレブレーションでは、最終走者を務めたタレントの中山秀征さんが「大変な日が続くが、聖火が希望のあかりとなり、平和な日常を願って一生懸命走らせてもらいました」と話した。

 県実行委員会は観覧自粛を促し、なるべくインターネットのライブ配信で視聴するようホームページで案内していた。密になってしまう場面が目立った30日の状況を踏まえ、31日は観客に「列になって並んで」と具体的に呼びかけ、一部で観覧エリアを広げた。

 ただ、草津町の湯畑周辺などには多くの人が集まった。担当者は「気温が上がり、想定より人出が多くなった場所はあるようだ」。

 富岡製糸場の正門前の沿道も「密」状態に。伊勢崎市の40代女性は「昨日の伊勢崎より密ですね。狭くて少しドキドキしました」。富岡市の70代男性は「密にならないようにと言われても、どうしようもない」とあきらめ顔だった。

 県実行委は、観覧状況を詳しく分析し、他地域での聖火リレーの密集対策に向けて組織委と情報を共有するとしている。

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 スキーのノルディック複合で冬のオリンピック出場を目指す小林朔太郎さん(20)=慶応大=は、高校時代を過ごした長野原町で八ツ場(やんば)ダムを見下ろす川原湯温泉の湯かけ広場から聖火を掲げて走った。

 草津町出身。小学校の裏山のジャンプ台で鍛え、ジャンプが得意に。同町出身で五輪金メダリスト荻原健司さん(51)らにあこがれ、クロスカントリーにも取り組んだ。ジャンプとクロスカントリーの2種目で競う複合で、中学、高校、大学でそれぞれ全国優勝。日本代表として派遣されたコンチネンタルカップでは9位に入るなど、世界を見据えて戦う。

 五輪は「目標とする一番大きな大会」。冬と夏の違いはあるが、東京五輪聖火リレーを走ったことで「オリンピックに出たいという思いが、より一層強くなった。メダルを取りたい」と決意を新たにした。

 長野原高校時代は、草津町から自転車で約9キロの坂道を通った。登校は下り坂で「車より速い」が、帰りはきつい上り坂が続き、足腰が鍛えられた。

 この日はサポートランナーとして、26日に閉校した長野原町立第一小学校の児童が伴走した。小林さんは「私を育ててくれた長野原町を走れて光栄。応援もあり、力強い走りができた」。(柳沼広幸)

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 富岡製糸場の正門前で、下仁田町出身のタレント井森美幸さんから聖火を受けた小幡みなみさん(15)=甘楽町立甘楽中学校卒=は、笑顔で走り出した。

 女子ハンドボールの有望選手で、中学2年の時に16歳以下(U―16)の日本代表に選ばれた。

 1、2年生の時は甘楽中の中心選手として2年連続で県大会を制したが、全国大会出場は1年生の時だけ。昨春以降はコロナ禍で主な大会が中止になり、悔しい思いの連続だった。

 4月から富山県の強豪、高岡向陵高校に進学し、日本代表チーム「おりひめジャパン」入りを目指して練習に取り組む。

 「オリンピックに出たいという夢があって、東京大会にも関わりたいと思い、応募しました」。沿道には家族や甘楽中ハンドボール部の同級生、顧問の教員らが駆けつけ、名前入りのうちわなどを手に声援を送った。身長174センチのホープは、友人らに手を振りながら走り抜けた。

 「緊張しましたが、応援がありがたくて楽しく走れました。将来は日本のために成績を残せる選手になりたい」。力強く話した。(遠藤雄二)