オーストラリア議会は巨大IT企業の米グーグルや米フェイスブック(FB)を念頭に、ネット上でニュースを表示する際、報道機関への対価の支払いを義務づける法案を2月25日に可決した。豪政府によると、義務化は世界初。対価の支払いを巡る両社の動きを加速させる可能性がある。(シドニー=小暮哲夫、サンフランシスコ=尾形聡彦)
豪政府は、検索サイトやSNSがニュースを表示して多額の広告料収入を得ているのに、対価を支払っていないことを問題視。法案では、巨大IT企業に報道機関への支払いを義務づける手続きと規則を定めた。
今後は政府が法の対象となるIT企業とニュースが表示されているサービスを指定。IT企業はニュースを発信した報道各社から支払い契約を求められれば、交渉に応じる必要がある。交渉がまとまらない場合は仲裁機関が支払い条件を決める。決定に従わないと、罰金が科せられる。
罰金額の上限は、1千万豪ドル(約8億円)を基準に、豪州での年間の売り上げの10%と設定される場合もある。豪政府の報告書によると、2018年の豪州での売り上げは、グーグルが37億豪ドル(約3100億円)、FBが17億豪ドル(約1400億円)で、罰金は数百億円にもなる可能性がある。
法整備、招いた反発と「実利」
義務化の動きに両社は反発した。
グーグルは1月、豪州での検索サービス停止も示唆したが、法案審議が2月に大詰めを迎えると、民放や地元紙を傘下に収めるナイン・エンターテインメントなど大手4社と計年1億豪ドル(約80億円)以上とされる支払いで合意した。ただ、支払う理由は検索サービス内でのニュースの表示ではなく、グーグルが新しく始めるニュースサービスに記事を提供する見返りだ。
すると、政府は法案を修正。IT企業が独自に豪州の報道各社と契約を結び、メディア産業に「かなりの貢献」をすれば、義務化の対象にしない可能性があるとした。FBは閲覧制限などを数日内に解除すると発表した。民放「チャンネル7」グループとのニュース提供に関する基本合意や大手各社との交渉開始も明らかになっている。
この法案の修正を受けて、2月18日から豪州で国内や海外大手の報道機関によるニュースの閲覧やシェアに規制をかけていたFBも2月26日に制限を解除した。
両社が高額の罰金を定めた法律の適用を避けるために動いたことは明らかで、フライデンバーグ財務相は2月25日、義務化が「商業上の交渉を後押しした」と強調。法整備が両社の自発的な支払いを促す「実利」を強調した。法案の作成に関わってきた豪競争消費者委員会のロッド・シムズ委員長は2月24日、「義務化の法規則は、(個別の交渉が不調な場合など)必要であれば、いつでも使える」とも説明した。
ロイター通信によると、英国やカナダも類似の法整備を検討している。(シドニー=小暮哲夫)
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