大岡信賞、岬多可子さんに贈呈 「閉塞の場の片隅で」

山本悠理
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 戦後日本を代表する詩人の大岡信(まこと)さんをたたえ、時代や社会を貫く力をもった「うた」を生み出す作り手を顕彰する第2回大岡信賞(朝日新聞社・明治大学共催)の授賞式が1日、朝日新聞東京本社で開かれた。受賞者で詩人の岬多可子(みさき・たかこ)さんが詩作に込める「小さなもの」に向けたまなざしに対し、選考委員たちから祝福の言葉が贈られた。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、明治大学の大六野(だいろくの)耕作学長と選考委員はオンラインで式に参加した。岬さんには朝日新聞社の渡辺雅隆社長から、賞牌(しょうはい)と賞状が授与された。

 大六野学長は「現代社会では相変わらず、声の大きなもの、力の大きなものが、その他の目立たぬものを圧倒し、黙殺しているように感じる。そうした中、人々が見過ごしがちな存在に思いをはせる岬さんの詩作は、小さくともきらめきを放つ『個』を見いだし、光をあてることに他ならない」とあいさつした。

 草木や小石、かすかな「幼いもの」……。最新詩集「あかるい水になるように」に収められたものをはじめ、詩作を通じてそれらに耳を澄まし続ける岬さんに、選考委員たちもそれぞれの言葉を贈った。

 詩人・作家の蜂飼耳さんは「詩になにができるかという問題提起がたびたびされるが、詩というものは、ただそこにあることに意味があるのだということを岬さんの詩集は改めて示した。強く丈夫な、細い、一本の糸によって紡ぎ出された詩集であると感じた」

 作家・フランス文学者の堀江敏幸さんは「書き手を取り巻く日常、庭という小さな世界と向き合うことで、背後にある大きな世界、見えない世界と呼吸を合わせていくような感覚をもたらす作品だ」。「一人になることを恐れず、一人になることによって、外につながっていく強さ。それが作り出した詩集ではないか」と語った。

 賞牌の制作も担った美術家のやなぎみわさんは「『あかるいところから くらいところは見えない』という詩集の一節が、特に内面に響いた。そこにある小さなものに思いをはせるということが、今の私たちには絶対的に足りていないのではないかと思う」と述べた。

 式の終盤、岬さんも壇上で受賞の思いを語った。「私が書き得るのはごく限られたもので、経済的な価値や効率性といった尺度からは外れたものではあるけれど、それらは私なりの『こころの仕事』なのだという思いを、今回の受賞が後押ししてくれた」

 「この日々のなか、のびのびと生きるということは誰にとっても難しく、感情や言葉も奪われ、流されていく。大変な事態ではあるけれど、閉塞(へいそく)の小さな場の片隅で、小さな声を発し続けるような詩を、ひそかに積み重ね、残していくことが出来れば」。コロナ禍を経て、これからも自らの中で続く詩の探究を、そう表現した。(山本悠理)