タニタ秋田 社員証は活動量計 多品種少量生産が強み

増田洋一
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 秋田県大仙市にあるタニタ秋田は、体重計などでおなじみのタニタ(本社・東京都板橋区)の国内唯一の工場だ。樫尾昇社長(59)が胸ポケットから活動量計を兼ねた社員証を出して見せてくれた。「今日はまだ2500歩しか歩いていませんね」と苦笑した。

 社員証は仕事場への入退室の際に使われるほか、社員の健康管理にも活用されている。活動量計は歩数を測るだけでなく、3次元加速度センサーと、あらかじめ入力した身長・体重によって、仕事や家事など日常の動きによる消費カロリーがわかる。そうしたデータが社員証の通信機能で会社のシステムに送られる。

 タニタグループは昨年10月、このシステムを社外に応用、地元・大仙市と協定を結び、同市の全市民、在勤者約8万人を対象に健康管理事業を始めた。自社製の活動量計を無料で配っている。計測データを活用して一人ひとりの健康状態にあわせた運動などを提案して、生活習慣病の予防に取り組む。30年度までに市民の年間医療費を約22億円減らすのが目標だ。

 樫尾氏は大仙市の隣の美郷町で生まれ育ち、1980年に入社。2019年5月、タニタ秋田の社長に就任した。生え抜きとしては3代目だ。こうした取り組みを始めた理由を「地元への社会貢献。健康計測機器メーカー、タニタのPRという狙いもあります」と話す。

 タニタ秋田は、体重や体脂肪率などを測る体組成計や料理用はかりなど、家庭用と業務用の商品を作っている。主力は家庭用の体組成計だ。売れ筋は数千円だが、上級機種になると、五つの部位(左右の両腕・両脚と胴体)別に筋肉量までわかる。トレーニングやリハビリによる筋肉の付き方を測る利用者もいるという。医療やフィットネスクラブで使われる業務用の最高級品は200万円する。

 最近伸びているのがアルコール検知器。旅客機パイロットの飲酒問題や、トラック、タクシーの運転手の乗務前点検をきっかけに需要が拡大した。

 タニタ秋田が作っている商品は約800品目にのぼる。消費者の多様な要求に応える多品種少量生産こそが強みだと樫尾氏は言う。これを実現するためラインによる流れ作業ではなく、1人(まれに2人)の作業員が商品を組み立てるセル生産方式を採っている。

 1人の作業員が組み立てる商品は5、6機種。色違いをカウントすれば品目はもっと多い。受注が減った商品から、増えた商品の生産へ作業員が臨機応変に移りやすくしている。

 樫尾氏が入社した当時はベルトコンベヤーで生産していたが、30年ほど前、セル生産に変えた。当時、改善活動の事務局として携わった樫尾氏は「部品・完成品の在庫が少なくて済むという利点もあります」と話す。

 タニタグループの工場はタニタ秋田と中国広東省にあるが、海外企業(協力工場)に商品を作ってもらうこともある。タニタ秋田は「マザー工場」として「新技術を採り込んで量産化を確立し、ある程度こなれたら中国工場や協力工場に生産を移し、技術指導や品質管理をする」(樫尾氏)。

 その結果、高価格品は秋田で、低~中価格品は中国や協力工場というすみ分けになっている。国内で販売する業務用のはかりは秋田で受注生産している。受注から商品出荷まで4日しかかからない迅速さがセールスポイントだ。

 地球が自転する遠心力で、重力は赤道に近いほど小さくなる。例えば、北海道で100キロの物は沖縄では140グラム軽くなる。このため、業務用のはかりは、日本を最大16地域に分けて補正。輸出する際も国別に補正して出荷している。(増田洋一)

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 〈タニタ秋田〉 タニタグループの国内唯一の工場。設計やコールセンター業務もしている。秋田県と仙北村の誘致を受け、1973年にタニタの秋田工場として設立された。93年にタニタから完全子会社として分離。従業員240人のほぼ全員が、大仙市仙北市横手市などの地元採用。