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 大学生だけで経営するラーメン屋が、奈良市の旧市街「ならまち」の一角にある。「Jinniyah(ジンニイヤ)/奈KAMA」。ユーチューブで学んだ四川風麻婆(マーボー)豆腐をのせた旨辛(うまから)ラーメンを看板に、若者たちが新たな風を吹かせようと挑んでいる。

 昨年10月に開業。経営や広報を担当するのは近畿大学農学部2年の西奈槻(なつき)さん(20)、調理を担当するのは同じ大学の奥野亮太郎さん(20)。西さんと奥野さんを含む友人4人で切り盛りする。

 「お前の麻婆豆腐で店やらん?」

 西さんが奥野さんに出店を持ちかけたのは開業のわずか1カ月前だった。コロナ禍で大学の授業はオンラインが中心。うんざりして、2人とも活力をもてあましていた。

 橿原市出身の西さん。高校時代はプロドラマーを目指していた。オーディションを受けに渡米したが、実力差を目の当たりに。「音楽以外で自分を表現したい」と大学に入って起業を志すようになった。県内でラーメン店の新規開店が相次いでいることから「ブームに乗ろう」と考えた。

二つ返事で「やります!」

 起業家や経営者にSNSでアポをとって、相談に乗ってもらった。そんな中、父親の紹介で、店の大家の湯脇智子さん(64)と知り合った。熱意を伝えると「空き店舗がある。使っていいよ」と持ちかけられた。二つ返事で「やります!」と答え、すぐに奥野さんに声をかけた。

 奥野さんは愛知県出身。西さんと同じテニスサークルに所属し、すぐに親しくなった。奥野さんは近畿大に入って自炊を始め、麻婆豆腐づくりにはまった。友人たちに振る舞い、評判を呼んだ。ラーメン店での修業経験は無かったが、西さんに誘われて「新しい挑戦はするもんや」と翌日から特訓を始めた。

 毎日3食以上、麻婆豆腐をつくって食べた。参考にしたのはユーチューブ。「四川風麻婆豆腐の動画は全部見た」と奥野さん。様々なレシピを見比べ、中国製の香辛料をつかい、本場の味を心がけた。麺は製麺されたものを使うが、50種類以上を取り寄せ、相性を確かめた。

 西さんはホームセンターで道具を買いそろえ、ほぼ自前で内装を整えた。調理器具と内装の経費はあわせて30万円。アルバイトでこつこつとためた2人の貯金でまかなった。

「コロナで学生はほんまに何もできない」

 急ピッチでの開店から約5カ月。当初は1日10人程度しか来なかった客も、SNSで積極的に発信すると、休日は60人近くが訪れるように。順番待ちの列ができる日もある。新メニューの開発の様子もSNSで生中継して、フォロワーから意見を募る。

 平日は授業を受けた後、店に向かう。「コロナで学生はほんまに何もできない」と西さん。店を営むことで情熱の行き場が見つかった。学生ながら、経営者の苦しさも分かってきた。「若い力で新しいことをして、飲食店を、奈良を盛り上げたい」と話す。

 中太の縮れ麺にとろみのある麻婆豆腐をかけた「シセンマーボードウフラーメン」(税込み950円)は、あっさりめの麺とうまみの濃い麻婆のバランスが絶妙。ショウガをふんだんに使ったギョーザも人気だ。木曜定休。平日午後6~9時。土日祝日午前11時~午後3時、午後6~9時。問い合わせは西さん(080・5710・6137)。(根本晃)