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コロナ禍でも続けてほしいこと 産婦人科医・高橋怜奈

産婦人科医・高橋怜奈
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、医療機関の受診が必要なのに、感染をおそれて控える傾向が出ています。自分では健康だと思っていても、治療が必要な病気がひそんでいることもあります。女性特有の病気の場合はどうでしょうか。SNSなどで病気や体の悩みについて情報発信している産婦人科医の高橋怜奈さんが寄稿しました。

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 2021年が明けて2カ月がたちました。昨年に引き続き、今年も新型コロナウイルスの感染対策は欠かせそうにありません。マスクの着用やこまめな手洗い、テレワークなどの「ニューノーマル」に対して、「ニュー」をつけることに少し抵抗がでてきた人もいらっしゃるのではないでしょうか。

 医療現場の話をすると、私は産婦人科医なので、コロナ関連の患者さんを中心的に診ているわけではありません。ただ、確実にコロナの影響が産婦人科にも広がっていると痛感しています。

「経過観察」の意味

 たとえば、がんの治療後や経過をみなければいけない病気の人には、定期的に受診をしていただくのですが、特に症状がない場合だと「コロナが怖いから」という理由で受診をためらってしまう人が多いようです。

 よく病院にも「経過観察をしているだけなので、コロナが落ち着いてからまた改めて予約を取り直したいです」という電話がかかってきます。「経過観察」というと何もしていないように思われるかもしれませんが、再発や悪化の可能性がある病気の場合は、その兆候を見逃さないための大切な診察をしているのです。

 また残念ながら次のような事例もこの1年でとても増えました。それは人間ドックや勤務先の子宮頸(けい)がん検診で「要精密検査」という結果が出た人が、特に症状がないから受診を控え、症状が出てから受診をしたら進行した子宮頸がんが見つかる、ということです。

 本来、子宮頸がんは早期の発見・治療ができるがんです。せっかく検診を受けているのに結果の異常を放置してしまうことは残念でなりません。

 子宮頸がんの場合は症状が出る時にはすでに進行していることが多く、初期の子宮頸がんや前がん病変の場合には症状は全くといっていいほどありません。検査を受ける時は、検査結果を聞き、必要であれば精密検査や治療を受けるまでが検査の一環、と思う習慣をつけてもらいたいです。

受診は不要不急ではない

 「コロナが怖い」という点についても、外来の待合室で、マスクなしで患者さん同士が大声で話したり接触したりすることはほとんどないため、医療機関を受診をすることに関しては感染のリスクは低いと考えていいでしょう。そしてまず前提として「受診は不要不急ではない」ということを声を大きくして言いたいです。

 医療は病気を治すだけではなく、日常のパフォーマンスを上げるものでもあります。

 代表例が生理です。生理とは、妊娠・出産に向けて子宮内膜という赤ちゃんのベッドになる部分が準備をして、妊娠しないことがわかれば大掃除をしてベッドを捨てるシステムです。毎月起こる事ではありますが、生理によって日常生活のパフォーマンスが下がっている方も多いです。

 本来であれば少しでも困っていれば産婦人科を受診してもらいたいのですが、実際には、生理痛や生理不順があっても我慢してしまう人も多いのが現状です。生理痛が、学校や仕事を休んでしまうほどの痛みだったり、休むほどでもないけれど鎮痛剤を毎回使うほどだったりするならば、それは「月経困難症」という病気です。保険適用で治療ができます。

我慢しないで医療に頼ってみると…

 「いつものことだから我慢すればいい」から、「医療に頼ったらいつものことがもっと楽になる」という考えにシフトチェンジできる人が増えたらいいなと思います。

 目にみえないウイルスに対して私たちはマスクをし、丁寧に手洗いをし、会食の自粛を続けています。同じように自分のからだの今まで目を向けていなかったところに、目を向けてもらえたらたらと思うのです。

 「定期検診だから」「症状がないから」「我慢すればいいから」。そう思わずに、普段の日常をもっとよくするために、医療をもっとポジティブに利用してもらえたらいいなと思います。

 最後に、コロナ禍の乗り切り方についてちょっとアドバイスを。

密を避けて、ストレスをうまく発散

 私は産婦人科医をしながらプロボクサーとしての活動もしています。毎日走るなどの運動をすることは日常生活にハリをもたらしてくれていました。

 しかしコロナ禍でジムが臨時閉館したり時短営業になったりして、以前のように好きな時に体を動かすことができなくなってしまいました。私は普段毎日運動していて、仕事以外で家の中でじっとしている生活で、精神的に疲れてしまった時期がありました。

 そんな時に密を避けて屋外でランニングをしたり家の周りを散歩したりすると、とても気分がよくなったのです。

 確かに今は自由にのびのびと旅行もいけません。会食の機会も減り、ストレスのたまる人も多いと思います。大々的に旅行や移動をしなくても、少し外の空気を吸ってみたり、散歩したりすることで心や体がリラックスすることも多いです。

 このように自分のストレスをうまく発散することも不要不急ではなく、精神衛生上、そして体の健康のためにも大切なことだと思うのです。感染リスクになるような行動を抑えながら、できる範囲で普段通りの行動を続けてもらえたらと思います。(産婦人科医・高橋怜奈)

 

たかはし・れな 2009年東邦大学医学部卒業。産婦人科専門医。医師のかたわらプロボクサーとしても活動。ユーチューブなどで病気や性の疑問などについても発信している。