圧巻40mの大絵巻 芭蕉の生涯描く 大津で全巻初公開

筒井次郎
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 【滋賀】総延長40メートルにもなる、江戸時代の俳人・松尾芭蕉(1644~94)の生涯を描いた絵巻「芭蕉翁(おう)絵詞伝(えことばでん)」(全3巻)が、大津市歴史博物館(御陵町)で展示されている。開館30周年の企画展「芭蕉翁絵詞伝と義仲寺(ぎちゅうじ)」だ。33の場面を描いた大作で、全巻公開は初めて。4月11日まで。

 絵巻は縦約38センチ。3巻で長さが計40メートルあり、四角い展示室の3辺の壁に沿って、広げて公開されている。墓のある義仲寺(大津市馬場1丁目)の門外不出の寺宝で、保存状態が良い。緑青(ろくしょう)や白群(びゃくぐん)などの顔料を贅沢(ぜいたく)に用いた色彩は鮮やかだ。

 絵巻は伊賀(三重県)出身の芭蕉が10代で出仕するところから始まる。後に江戸に構えた草庵(そうあん)には、俳号の由来となった芭蕉(バナナに似た植物)が庭に植えられている。

 「奥の細道」の旅では、白河の関(福島県)や松島(宮城県)など各所の風景を詳細に描写。晩年に訪れた京都の四条河原での納涼や琵琶湖の浮御堂(うきみどう、大津市)を写実的に描き、義仲寺の墓で終わる。

 市指定文化財で、一般公開は芭蕉の没後300年の1994年に一部の挿絵が展示されて以来となる。

 芭蕉の顕彰に生涯を捧げた文人僧・蝶夢(ちょうむ、1732~96)が11年かけ、芭蕉の99回目の命日である1792年に完成させた。

 伝記は蝶夢が自ら執筆した。「古池や蛙(かわず)とびこむ水の音」などの名句や紀行文を盛り込みながら、生涯をたどった。挿絵は狩野派の絵師が手がけた。

 蝶夢の情熱にも驚かされる。絵巻を納めた木箱には、東北から九州まで57人の名が墨書されている。蝶夢は資金援助を受けるため、各地を訪ね歩いた。百回忌には絵詞伝の版画本を発行し、俳諧に疎かった庶民の関心を引きつけた。荒廃していた義仲寺も復興した。

 学芸員の横谷賢一郎さんは「旅する俳人という今日の私たちがイメージする芭蕉の姿は、この絵巻によって作られた。40メートルの絵巻を通し、蝶夢の業績も知ってもらえたら」と話す。

 展示数は160点。芭蕉や門人の書跡、江戸時代の絵師・伊藤若冲(じゃくちゅう)が描いた義仲寺の天井画も並ぶ。絵詞伝を含め、展示品の大半は撮影もできる。

 月曜休み。一般330円、高校・大学生240円、小中学生160円。問い合わせは博物館(077・521・2100)。(筒井次郎)

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 松尾芭蕉は毎回、挿絵のどこかに登場する。中には豆粒ほどの姿もあり、伝記を読みながら探す楽しみもある。「四条河原納涼の図」では鴨川の床(画面中央上部)に座り、「浮御堂の図」では、お堂の先端(画面右下)で三上山の満月を眺めている。