LRT事業超過問題、2年前から「費用対効果」疑問視か

中村尚徳
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 【栃木】JR宇都宮駅東側で整備が進む次世代型路面電車(LRT)の事業費が当初の公表額を大幅に超過した問題で、200億円近い超過額が試算された約2年前、宇都宮市内部で事業の費用対効果を疑問視する指摘が出ていた疑いがあることが、朝日新聞の取材で分かった。

 費用対効果は事業や政策の評価を測る指標。その一つで納税者に対する透明性を高める目的もある「費用便益分析」では、費用対効果を測るために、事業が社会全体に及ぼす効果を金額に換算した「総便益」を、「総費用」で割った「費用便益比」を算出する。

 この数値が「1」を超えた場合、事業には効果があるとされ、事業推進の判断材料になる。例えば、千葉都市モノレール千葉市)の場合、検討された2案の延伸ルートの費用便益比がいずれも「1」を割り込んだため、千葉市は2019年、延伸を断念した。

 宇都宮市によると、事業費増額前の458億円で算出したLRTの費用便益比は、30年間で「1・07」、50年間で「1・30」だった。しかし、分母の総費用が膨らんだ場合、当然数値は下がる。

 朝日新聞が入手した約172億円の事業費増額を試算した18年12月の資料には、「費用便益の確保は困難である」「費用便益比が1以下になることが想定される」などと記され、「便益を上げる方法を検討する」が課題として挙げられていた。

 LRTの需要予測をめぐっては、市が約2億円をかけ民間会社に発注。その予測によると、1日当たりの利用者数見込みは平日が通勤1万3357人を含む1万6318人。以前から、この数字を疑問視する指摘が上がっていた。今年2月には再調査を求める陳情が市民から市議会に提出された。

 昨年11月にあった市長選の公開討論会でも、事業の一時凍結を掲げた新顔候補が、「テレワークが進み、通勤客が減る」などと主張。廃線になった愛知県小牧市新交通システムを例に挙げて赤字を懸念した。これに対し、佐藤栄一市長は「需要予測には買い物客などが含まれず相当絞っている。努力して乗客を増やす」と反論した。

 佐藤市長は200億円近い事業費増額が明らかになった1月中旬、朝日新聞の取材に対し「黒字化は想定より遅れる」と答えた。市議会や記者会見で大幅増額を公式に説明した1月25日にも、需要予測や収支見通しを再検証する考えを示している。

 佐藤市長は2月22日の会見で、事業費増額で変化した可能性が大きい費用対効果について「検討している」と述べた。(中村尚徳)