楢崎貴司
私が見てきた限り、菅義偉首相がこれほど番記者に感情をあらわにしたことはなかった。首相と番記者たちによる2月26日の質疑のことだ。首相は記者からの質問を途中で遮り、いら立つ姿が生中継でテレビに映し出された。
緊急事態宣言の一部地域の先行解除に伴って行われた「ぶら下がり取材」でのことだった。正式な記者会見と違い、首相官邸のエントランスホールでやりとりをするもので、普段は数分で終わる場合が多い。だが、この日は官邸側が会見を拒んだこともあってか、約18分間、質疑が繰り返された。
私は質疑の中盤、首相に「かねて『専門家の意見というのは重視する』という発言もあったと思う。その点についてはいかがお考えですか」とただした。先行解除を了承した専門家による諮問委員会のなかからも、議論の過程で感染再拡大に強い懸念が示されており、首相の認識を確認すべきだと考えた。
すると首相は表情をこわばらせ、語気を強めた。
「いや、ですから。基準を決め…
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