就職・仕事との両立は 若いケアラーが悩み語りあう

畑山敦子
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 病気や障害のある家族の介護や家事などをする18歳未満の「ヤングケアラー」に対する認識は広まりつつあります。進学や仕事などとの両立に不安を感じているのは、その上の世代、18歳~主に30代で家族をケアする「若者ケアラー」も同じです。周囲に話しづらい悩みを打ち明けたり、情報交換できたりするオンラインの「語り場」に、若いケアラーが集まっています。

弟のケアと就職、どうなる? 悩みを相談

 昨年12月末。家族を介護するヤングケアラー、若者ケアラーのオンラインコミュニティー「Yancle(ヤンクル) community」の交流会がオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」で開かれた。

拡大する写真・図版若いケアラーが集まるオンラインの「Yancle community」で参加者と話す宮﨑成悟さん=昨年12月、東京都新宿区(画像の一部を加工しています)

 「3カ月前から一人暮らしを始めたんだけど、弟のことが気になって実家によく顔を出しています」

 こう語ったのは、自閉症の弟(19)がいる女子大学生(21)だ。

 弟はトイレや入浴の介助のほか、壁に頭を打ち付けるなど自傷行為をすることがあるため見守りが必要で、母だけでは弟のケアをする手が足りず、女子大生は中学の頃から放課後も家にいることが多かった。弟が特別支援学校中学部を卒業後、家事など日常生活に必要な動作の訓練などを受ける事業所に通うようになってからは、送迎もした。「私がやるのはあたり前だと思って、自分のことを後回しにしていた時期もあった」

 大学卒業が近づき、勉強や就職活動に集中しようと、親と相談して一人暮らしを始めたが、父は仕事で忙しく、母や弟を気にかけている。

 弟のことを支えたいと思う一方、自分が働き始めたらどうなるのか不安もある。SNSでコミュニティーを知り、働きながら介護する人の話を聞きたいと思って参加している。「くだけた雰囲気で家族のことも話しやすい。皆さんの経験が参考になります」

 60代の母を介護する女性(34)は「気力で何とか介護している。でも、介護しない方がつらいと思った」と介護する理由を語った。

 父が数年前に亡くなってから、女性は母と2人暮らしだった。母は昨年、脳出血を起こし、意思疎通はできるものの、身体にまひが残って生活全般に介助が必要だという。女性は飲食店で働きながら母を在宅で介護している。周囲からは1人で介護することを心配され、施設への入所を薦められたが、「一緒に暮らしてきた母が急に施設に入るのは考えられなかった」。介護に加え、母と暮らし続けたいという自分の思いが周囲とすれ違うと感じ、悩んでいる。

 この日は女性を含めて家族を介護する7人が参加し、「私も母と2人暮らしで介護してきた」と共感を寄せる人もいた。

「思いを話し、受け止めあえる場を」

 コミュニティーは、宮﨑成悟さん(31)が昨年4月、チャットツール「Slack」を使って始めた。SNSやメディアを通じて認知度が上がり、1年弱で参加者は約120人になった。それぞれの書き込みに宮崎さんが返信したり、参加者同士でメッセージを送りあったりする。

 宮﨑さん自身も難病の母を高校生の頃から介護し、大学浪人や介護離職も経験した。介護を続けながら、当事者を支援している。

 宮﨑さんは「学生や働きながら介護している人たちが、家族のことを思って自立に踏み切れないなどの悩みがチャットに書き込まれている。解決策を聞きたいだけでなく、自分の声を聞いてほしいという思いも感じます。若いケアラーが周りに言えない思いを話し、受け止めあえる場を続けていけるよう、悩みに寄り添うことが重要と感じています」と話す。

【オンラインイベント「ヤングケアラーが語るリアル」13日に】

【オンラインイベント「ヤングケアラーが語るリアル」13日に】

 介護で勉強の時間がとれない。悩みを話せない――。そんな悩みをもつ病気や障害のある家族の介護や家事を担う18歳未満の「ヤングケアラー」がいます。18歳から主に30代の「若者ケアラー」も、進学や仕事、子育てなどとケアの両立に悩み、周りに話せず孤独を感じています。

 高校生から母を介護し、若いケアラーのオンラインサロンを運営する宮﨑成悟さんと、若年認知症の母の介護を経験し、若いケアラーの取材もしてきた記者が、13日午後7時からオンラインイベント「記者サロン」で自身や当事者たちの経験を元に語り合います。参加無料。ウェブ(https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11003729別ウインドウで開きます)からご応募ください。(畑山敦子)