男性の芸だった落語 「普通の女性を主役に笑わせたい」

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聞き手・小原智恵
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落語家・三遊亭遊かりさん

 熊さん、八っつぁん――。古典落語には男性の登場人物が多く、演じるのも男性が多い落語界。そのなかで、女子落語家集団「落語ガールズ」にも所属して活動する三遊亭遊かりさん(47)。女性が高座に上がること、女性を主役にした新作落語を作り始めて気づいたことなどを語ってもらいました。

     ◇

 日本酒のバーや問屋で計10年勤めた後、2012年6月に落語の世界に入りました。当時38歳、そして女性ということで、はなし家になるにはハードルが高くて「入れないだろうな」というのが私の中にはありました。一度断られましたが、縁があり、芸にほれ込んでいた師匠・三遊亭遊雀(ゆうじゃく)に入門しました。

 当時も今も女性は珍しい世界です。所属する落語芸術協会には現在12人の女性落語家がいますが、入門した当時の前座は私一人でした。

 寄席の楽屋に男しかいないなかでは異物です。一緒に暮らしてみると、ものの考え方も全く違う。そして、芸をやるほどに落語は「男性の芸」だと気づくという、大変だと自覚する機会が3段階くらいで訪れました。

 入門したてのころ、師匠に「早く着物に着替えられるように。楽屋には更衣室ないからな」と言われたときのことは覚えています。寄席のほとんどの楽屋には女性用更衣室はありません。今では隠しながらサッと着替えることができますが、女性が3人出演するなんて日は今でもびっくりします。

 落語の中のジェンダーに気づいたのは、見習い期間の前座から落語を好きにできるようになる二ツ目に昇進したとき。古典落語には「女性」が出てこないなと思いました。誰かの奥さん、おかみさん、おばあさん、遊女といった男性から見た女性は出てきますが、「熊さん」「八っつぁん」みたいな人はいない。そういう男性同士の会話の面白さを女性が伝える難しさに行き当たりました。

実体験織り交ぜた新作落語

 「新作冒険倶楽部」という会をしていて、そこで「夢をあきらめないで」という新作落語を書きました。20~40代の女性が、飲みながらそれぞれの世代であきらめなければならなかったことを話すという内容。インタビューしたほか、40歳になって「豚骨ラーメン全部のせ」が食べられなくなった私の実体験も織り交ぜてつくりました。

 「落語は会話」という、落語の中の会話がどんどん変化していくのが師匠・遊雀の落語です。男性同士の会話で変化をつけていくのは難しかったのですが、この新作は「熊さん」「八っつぁん」が勝手にしゃべり出すように、女の人たちが勝手にしゃべって話を進めてくれる感覚がありました。

 誰かに対しての役割を背負っている女性ではなく、朝起きて、洗濯して家でテレビを見ている……という普通の女の人が出てくる落語をつくっていきたいと思っています。それを聞き、男女問わずに笑える世の中がいいなと思います。

 二ツ目になった翌年から女性…

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