同時にいくつも仕事 「ガントチャート」で長期的に計画

中島美鈴
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イラスト・中島美鈴
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 仕事が忙しいときに限って、新しい仕事が舞い込んでくる。うれしいやら、悲しいやら……。でも、自分は一人しかいない。どうやっていくつもの仕事を同時にこなせばいいの? そんなときに役立つ時間管理について、臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

仕事に追われててんてこまい、どうすれば

 案件Aの仕事をしているときに、案件Bが飛び込んできて、終わったはずだった案件Cがやり直しになって……。一度にいくつものことをこなさねばならず、てんてこまいになることはありませんか?

 こんな状態をマルチタスクと呼びます。これが苦手な人は多くいます。案件Aに没頭させてくれるならいいのに、そこにBやCが入ってくると集中をそがれるのですね。さらにAに向けて自分なりに立てていた計画が狂ってしまうこともストレスですね。井邑ら(2016)の研究では、人間は時間をコントロールできないことでストレスが高まることがわかっています。

 とはいえ、案件A→B→Cと直列つなぎにシングルタスクのまま仕事を進められる職種は限られます。

 いや、シングルタスクの職業の方も、仕事というタスクと、自分が今日何を食べる、誰と会う、確定申告や電話をかけるといったプライベートな手続きがある、何時に寝る……。やはり誰もがマルチタスクをうまくこなす方法を必要としていると言えるでしょう。

 さて、今回から番外編ですが、ADHD主婦のリョウさんの夫、ケイさん(30代、会社員)に登場してもらいます。

 ケイさんもまた、ADHD傾向の強い男性で、仕事中も気が散りやすく案件Aをこなしていると、Bが間に合うか不安になり、気付けば脱線してBをしてしまっている……。こんな働き方をしています。

 これはまだマシで、ふと気づくと、ネットサーフィンで何十分も無駄にしていることがよくあります。

 その結果、どの案件も締め切りギリギリか、もしくは間に合わなくなり、周囲に迷惑をかけてきました。また時々、案件Cそのものをすっかり忘れてしまうミスまであり、これまで大きな失敗を何度か経験しています。

 こんな会社員のケイさんを救うために、紹介したいのが「ガントチャート」です。

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ガントチャートの見本

 ガントチャートは、プロジェクトの工程管理につかう表で、作業の計画や進み具合を長期的に視覚的にとらえられるものです。

 古くからありますが、実は近年ではあまりはやっていませんでした。

 おそらく、ガントチャートは数週間から数カ月単位の比較的長いプロジェクトを管理するためのもので、仕事柄もう少し短期的なプロジェクトで動いている方もいらっしゃるからかもしれません。

難易度高い「ガントチャート」 再び人気に

 また、ガントチャートはスケジュール管理の中でも難易度が高いことも原因かもしれませんね。

 しかし、昨年ぐらいから、ガントチャートがまたはやり出しています。

 「フリーランスの方が増えたからかな?」と個人的には思っているのですが、デザイナーや本の出版などのクリエーターの方々は元々ガントチャートで計画を立てるのにもってこいの職種なのですが、このプロジェクト管理の仕方が一般の方にも使えると見直されているようです。

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蛇腹折りになっているガントチャート

 写真は人気のスケジュール帳で、蛇腹折りになっているため、広げると何カ月分も一気に見渡せます。このぐらい広げられるのは、すごいなと思うんです。

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 これまでのスケジュール帳は月単位でページが区切られているものが多くありました。それで、翌月の初旬に大きな仕事の締め切りがあっても、見逃しやすく、翌月になって初めて大慌て!

 こんな事態もあったはずです。

 長期的に見渡す。直感的に視覚で予定をつかむ。これがガントチャートの最大のメリットです。

 また、ガントチャートを手書きすることで、より頭にインプットされやすく記憶に残ります。

 みなさん、想像してみてください。

 「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」。こんな不安を抱えずに、ガントチャートに描かれた通りに仕事をこなしていけば、ちゃんとすべてのタスクが計画通りに終わっていく安心感。

 「ああ、すっきり」「私にもできた!」。そんな達成感。いいと思いませんか?

 私はガントチャートを使うようになって9年ほど経ちましたが、フリーランスとして仕事をいただくようになるとガントチャートは手放せません。

 多くの書籍の同時執筆、講演の準備、研究プロジェクトの進行、学会発表、大学の授業準備、論文執筆、事業主としての雑務、子どもの学校行事や地域の子ども会、自分の趣味の創作活動のことなどをなんとかこなせています。

 冒頭にも述べたとおり、私たちはどのような仕事であれ、マルチタスクなのですから、忙しい時期こそ、ガントチャートでプライベートも仕事も管理して計画的に乗り切れたらいいでしょう。

 もちろんデジタルスケジュール管理派の方にもガントチャートはあります。二つほど例を挙げますが、他にもたくさんあるので試してみてください。

 *Instagantt:すでにタスク管理ツールAsanaを使われている方は同じIDで連携させると便利。

 *がんすけ:マウスで操作できるので直感的に把握しやすい。

 でもガントチャートを使いこなすのは、実は難しく、挫折する人が多いのです。

 立派な計画を立てても絵に描いた餅で、そのとおりにならず、遅れていくことが多いからです。こうならない計画立てのコツがあります。

 次回からリョウさんの夫、ケイさんと一緒にガントチャートを学びましょう!

 引用文献:井邑智哉、髙村真広、岡崎善弘、徳永智子 (2016) 時間管理尺度の作成と時間管理が心理的ストレス反応に及ぼす影響の検討 心理学研究、87、374―383。https://doi.org/10.4992/jjpsy.87.15212別ウインドウで開きます

 ◇3月6日(土)朝7時からこのコラムの筆者が主催するオンラインで働く人のための時間管理グループが始まります。ぜひともご参加下さい。https://worktimemana3.peatix.com/別ウインドウで開きます(中島美鈴)

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。