[PR]

 【秋田】北東北のスキー場の明暗が分かれている。積雪量に恵まれたものの、冬季の観光需要を支えてきたインバウンド(訪日外国人客)の利用が多かったゲレンデは、新型コロナウイルスの影響で苦戦を強いられている。一方、身近な野外レジャーとして多くの人が訪れているスキー場もある。

 上質の雪質と大規模なゲレンデが特徴の雫石スキー場(岩手県雫石町)。平日、高速リフトは運休している。動くのは週末や祝日だけ。台湾からの客に好評だったナイター営業も行っていない。

 昨季、訪れた人の大半が台湾やオーストラリアからだった。今季は国内客も含めて約5割減という。長沢浩司支配人は「インバウンドはほぼゼロ。ある程度は予想していたが、苦戦している」と話す。今季の営業は3月21日までの予定だ。「雪は多いので、今シーズンしっかり営業をして、来季につなげていくことが重要だと思っている」

 日本生産性本部が毎年発行するレジャー白書によると、国内のスキー・スノーボード人口は1998年に推計1800万人いたが、2015年は740万人と4割強まで急減。新型コロナの出現前までここ数年は横ばいから微減傾向だった。こうしたなか、「国内の利用者が底を打つなか、訪日外国人が占める割合が大きくなっていた」とあるスキー場関係者は話す。

 安比高原スキー場(岩手県八幡平市)は昨季、自社ホテルの宿泊客の約2割が海外から。周辺のペンションや盛岡市内のホテルに宿泊してやって来る訪日客も多かった。新型コロナの緊急事態宣言の対象地域拡大で、例年5月上旬までの営業を昨年は4月23日までに繰り上げたものの約36万人が訪れた。

 だが今季の国内客を含む入場者数は昨季の半分以下。コロナ禍で首都圏と地元の客も減り、売り上げは厳しいという。スキー場の畠山護支配人は、来年北京で冬季五輪が予定され、中国でスキーブームが起きているとしたうえで、「来季はコロナが収まり、今季スキーを控えた方にも来てもらって盛り上がることを期待したい」と語る。

 十和田八幡平国立公園の秋田県側に位置する秋田八幡平スキー場(鹿角市)も2月15日から3月19日まで営業を中止している。11月下旬から5月上旬までシーズンが長いことで知られるが、来場者が例年(約1万人)の半分以下になる見通しで、経費の負担が大きいためだ。新型コロナの影響で、トレーニング会場になっていた冬季国体やインカレの中止も響いた。運営会社の浅石敦幸社長は「人件費や油代などで1日約15万円の経費がかかるが、売り上げは5万~6万円。営業すればするほど赤字になる。春スキーや学校の春休みに期待したい」と話す。

「こんなに混んでるの久しぶり」

 県内や近場から訪れる人が中心のため、落ち込みが限定的だったスキー場もある。秋田県で最大規模を誇るたざわ湖スキー場(仙北市)。2月21日、4人乗りの高速リフト乗り場に長い列が出来た。小中高校生の1日リフト券が半額だった影響もあるが、スキー客から「こんなに混んでるの久しぶり」という声も聞かれた。この日、今季最多の約2450人が訪れた。

 昨年12月19日の営業開始から2月末までの入場者が約6万1千人。フリースタイルスキーW杯や全日本レベルの大会が中止されたが、前年同時期より約11%減にとどまる。

 積雪が多く、12月の営業日が昨季より8日多いことに加えて「インバウンドの比率が元々低いため、結果的に影響が少なかった」と長谷川博樹常務取締役は話す。訪れる人の大半は秋田県内、一部が岩手など近隣県からだ。

 18、19歳対象の千円の食事券を買えば1日券が無料になるキャンペーンも例年より前倒しして2月27日から始めた。「卒業シーズン、少しでも利用の底上げを図れれば」と長谷川さんは狙いを語る。

「密」になりにくい屋外で楽しめる

 青森県の八甲田、山形県の蔵王とともに「日本三大樹氷」をPRする森吉山阿仁スキー場(秋田県北秋田市)は、昨年までゴンドラで山頂付近まで上り、樹氷撮影に興じる外国人観光客が目立った。新型コロナが深刻化する前の昨年1月末まで、台湾やタイなど東南アジアから約1800人が訪れていた。今年はその姿はない。関東方面からの団体客の予約も皆無だ。

 それでも来場者数は2月末までで昨年比3割減。吉田茂彦支配人によると、県外への遠出を控えた県民の利用が例年に比べて多いという。

 キャビン付きの圧雪車で巡る週末と祝日の「夜の樹氷観賞」は、県民限定で座席数を15から10にしたが、毎回満席が続く。吉田さんは「自治体独自の宿泊割引などを利用して来場する人が多いようだ」と話す。

 秋田市郊外にある太平山スキー場オーパスも、前年の2倍以上の約3万3千人が訪れている。雪不足で計37日しか営業できなかった昨季と違い、雪が多い今季は元日の営業開始から連日営業出来ていることに加え、近場で来やすく、「密」になりにくい屋外で楽しめるためだと担当者はみる。ただ飲食をする人や客単価は前年より落ち込んでいるという。(成田認、加賀谷直人、松村北斗)