新型コロナ県内初確認から1年 下関市保健部長に聞く

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 山口県下関市で県内最初の新型コロナウイルス感染者が確認されて3日でちょうど1年。医療崩壊を防ぎ、市民の安心・安全な暮らしを守るため、行政は対応に追われた。厚生労働省出身で、医師でもある九十九(つくも)悠太・下関市保健部長(36)に、下関保健所長として指揮した1年を振り返ってもらった。

 ――中国地方としても初めての感染確認だった

 すごい緊張感をもって受け止めた。患者本人にどう伝えるか。病院がスムーズに受け入れてくれるのか、濃厚接触者の特定をどうするかなど、かなりドタバタした記憶がある。

 ――それから1年後の今の状況を思い描いたか

 まったくイメージできなかった。正直最初はSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)みたいに短期的に終わる可能性も考えていた。1月28日に中核となる市内の4病院長を集めて「大変なことになる。協力してやっていきましょう」と話したのを覚えている。

 ――市夜間急病診療所に4月20日、発熱外来を設置した

 市医師会にリーダーシップを発揮してもらい、本当にありがたかった。地域の外来診療を守るため、率先して医師会が動いてくれた。私も中に入れてもらい、腹を割って議論するような関係があったのは大きい。下関に着任後、信頼関係が構築されていったのは幸いだった。

 ――対岸の北九州市の感染拡大をどう見ていたか

 関門エリアの感染状況がどうなっているか、市の対策本部などで常に意識して議論してきた。影響を受けたのは北九州市立八幡病院の伊藤重彦院長。感染症対策に詳しく、副理事長を務めるNPO法人の活動を参考にして、11月に専門知識がある医師と看護師で「下関感染対策チーム」(SICT)をつくった。ノウハウを蓄積し、コロナ以外の感染症が発生した場合も、現場で感染拡大防止の指導をするのが狙い。

 ――下関市でも昨年12月以降、6件のクラスター(感染者集団)が発生した

 第3波は厳しかったけれど、波を経験するたびに防御力は高まっていると思う。迅速な検査態勢を整えることができたし、少々のことであれば対応できる。検体採取も当初は私がやっていたが、今は医師が付いて保健師が担当している。保健所としての対応力はかなり強化された。各病院の協力を得て、すぐ受け入れられる即応病床は128床まで拡充できた。

 ――報道対応で心がけてきたことは

 「同意がないので公表できない」というのはやめるように注意した。それは責任を個人に押しつけることになる。同意があれば何でも公表していいわけではないし、公表内容を判断する主体はあくまで行政。同意があろうとなかろうと、市民のために必要な情報は行政の責任で公表する。そこはこだわってきた。

 ――いよいよワクチン接種が始まる。コロナ禍の生活が長期化し、市民に伝えたいことは

 保健医療と経済は車の両輪であって、市民を含めてチームプレーヤー。相手を責めたくなる時はちょっと引いて、お互いの役割を見つめ直すとチームであることに気付くはず。相手の立場になって考えてみるのが大事だと思う。ワクチンを接種しても引き続き、「3密」を避ける対策は必要。接種に協力いただき、少しでも元の生活に戻ることを期待している。貞松慎二郎

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 つくも・ゆうた 広島市出身、岡山大学医学部卒。飯塚病院(福岡県)、倉敷中央病院(岡山県)、岡山大学病院で通算7年勤務。専門は外科、消化器外科。2016年に厚労省へ入省、19年4月から現職。趣味は読書、将棋。

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