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 白地に青色の唐草模様が代表的な砥部焼に、豊かな色彩でデザイン性のある作風を取り入れ、その可能性を広げてきた女性がいる。砥部焼作家の山田ひろみさん(63)=きよし窯、愛媛県砥部町五本松。2月、「産地や地域への影響力を持つ技術保持者」として、県の無形文化財(砥部焼)保持者に認定された。

 「女性では初めてだったのでうれしい。砥部焼はこれまで男社会だった。ようやく女性作家の発表の場が増えてきた」

 佐賀県出身。九州造形短大(現九州産業大造形短期大学部)でデザインを学んだ。砥部焼の窯元の一人息子だった男性と結婚し、砥部焼の世界に入った。

 まだ、バブル崩壊前。砥部焼の売れ行きはよかった。飽きのこない模様。ぽってりと厚みがあり、割れにくい食器は全国で売れていた。山田さんは、主婦業と窯元での手伝いに奮闘した。

 「自分なりのことをしたい」という思いもずっとあった。結婚から数年たったころ、おにぎりのような形の絵付けをしたひな人形を作ると、「かわいい」と評判に。テレビで取り上げられ、全国から注文が殺到した。夜まで仕事をする日々が続き、デパートなどでひな人形の個展を開くまでになった。

 食器の絵付けにも目を向けた。当時、色は4色だけ。他の色を出すには、ただ混ぜるだけでもうまくいかない。そこで、筆ではなく、毛先を短く切りそろえたブラシを使い、とんとんと色を重ねていった。

 微妙な色合いが出るようになった独自の「ブラッシング技法」が、その後の作品作りの基盤になった。有田焼で有名だった「和紙染め」の技法も取り入れた。

 「自分らしい、今までの砥部焼になかったものを作りたい」。工房には、黄色やピンクなどの草花を中心に、手にした人がうきうきするような、かわいらしいデザインのコップや皿が並んでいる。

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 大きな仕事が舞い込んだのは2015年のこと。2年後に開館する道後温泉別館飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)の浴室を飾る陶板壁画の絵付けを頼まれた。壁画は最も大きいもので高さ2・7メートル、幅5・4メートル。プレッシャーもあったが、自分が楽しんで描くことを心がけ、挑戦した。

 これまでの草花とは違う風景画を描いた。女湯は万葉の歌人、額田王(ぬかたのおおきみ)が詠んだといわれる歌にちなんだ、瀬戸内海の情景。男湯は山部赤人(やまべのあかひと)の歌に由来する霊峰・石鎚山。「やったことがない方法を求められたこともあった。それでも、デザイン担当者ら他の人の力も借りて、自分はこんなこともできるんだと新しい発見があった」

 ブラッシング技法は、小さなものより、大きなものに絵付けするほうが、グラデーションがきれいに見え、平面でより生かされるという。その後も、大きな壁画の仕事を手がけた。今後も陶板壁画に力を入れていきたいという。「自分の生きた証しが、公共のものとして残せるのがいい」と話す。

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 男性作家が中心だった砥部焼の世界。バブル崩壊後、業界が苦境にあえぐ中、女性ならではの視点を大切にしてきた。13年には、女性作家でつくるグループ「とべりて」を結成。JR四国の観光列車で使われる食器を手がけるなど、活動は9年目を迎えた。

 「焼き物でこんなことができるんだと発信したり、企業とコラボしたり。許される限り、産地を盛り上げていきたい」。これからも、伝統に新たな風を吹き込んでいく。(寺田実穂子)

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