なぜ被害者に注意喚起?痴漢防止ポスターもやもやの背景

吉村駿、白見はる菜
[PR]

 「悪いのは痴漢をする人なのに、なぜ被害者に注意を呼びかけるの?」。京都府内の学生らが、痴漢防止ポスターに抱いたもやもやした思いを、府警に投げかけた。たしかに、被害者に啓発をするポスターをよく見かける。背景には何があるのか。取材してみた。

 昨年12月にあった府警鉄道警察隊と京都女子大(京都市東山区)の学生の意見交換会。2~4回生の学生9人と隊員5人が、どうしたら性犯罪を防げるかを話し合っていた際、痴漢防止ポスターに話題が及んだ。

 「混雑した車両や、扉付近は避けましょう」「勇気を出して通報を 泣き寝入りしないで」

 府警が作り、京都駅などに掲示されているもの。学生からは「混んだ車内には痴漢がいる、という前提のポスター。痴漢を容認しているかのように取られかねない」「被害者に自責の気持ちを抱かせないかな」などの声が上がった。ほかの学生からも「変わるべきなのは加害者や、見て見ぬふりをする周囲の人ではないか」といった意見が出た。

 隊員らは、被害者が泣き寝入りすると、痴漢行為が悪質化することがあるとし「警察は、どんなことでもしっかり話を聞いて捜査する。まずは勇気を出して相談してほしい、というメッセージを込めた」などと説明。「周囲の人が見て見ぬふりをしないことが大きな抑止力になるのは間違いない」とも述べた。

毎年作る痴漢防止ポスター

 府警はほぼ毎年、痴漢防止ポスターを作っている。2016年は「痴漢はすぐ側(そば)で起こっています。私たちは許さない」とのメッセージを入れた。ただ、17年は「『助けて。』その一言で動けます。」、20年は「あなたの勇気、全力で応援します」。被害者に申告を求めるポスターを作る背景には「性被害の相談しにくさ」があるという。

 府警によると、恥ずかしさや恐怖心から周囲に相談できない被害者は少なくない。電車に乗れなくなった人もいるという。府警が昨年、痴漢や盗撮など府迷惑行為等防止条例違反の疑いで178件を検挙したが、ほとんどは被害者側からの相談や通報で発覚した。警察官の現認や第三者からの申告はごくまれという。

 府警は2月末、痴漢防止を呼びかけるキーホルダーとシールを公表した。ネコの目を大きく描き、「痴漢・盗撮 許さない!」というメッセージを入れた。デザインした立命館中高(長岡京市)の中学1年樋口果琳さん(13)は「加害者に『見てるよ!』というメッセージをシンプルに伝えたかった」と語った。

 同隊の村上真喜子隊長は「あらゆる年齢層の意見やアイデアをもらうことで、被害者側、周囲で手をさしのべる人、加害者側などより多くの人にアプローチできると思う。関心を持つ人が増えて、被害がなくなるのが理想です」と語った。(吉村駿、白見はる菜)