「輝く姿をもう一度」、やり投げ選手は人生を投げない

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酒瀬川亮介
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 仙台空港の少し南に、荒浜という漁港がある。そこで釣りをするのが、佐藤寛大(のぶひろ)の楽しみだった。

 仙台大4年だった佐藤は、陸上やり投げで、2009、10年と日本学生対校選手権(日本インカレ)を連覇し、11年の世界選手権(韓国・大邱)の代表を狙っていた。

 3月11日、午前中に練習を終えると大学の後輩と釣りに出かけた。いつもなら漁港の内側で釣るのに、その日に限って、欲が出た。「大物を狙おうか」。海側に数百メートル突き出た堤防の先端まで行った。のんびり釣っていると、そこに大きな揺れが襲ってきた。

「震災のせいにはしない」と言わないといけない雰囲気

 「いまでも鮮明に覚えてます」と佐藤は言う。堤防の幅は2メートルくらい。その真ん中が裂け始めた。海に落ちないように、時々はいつくばって港まで戻った。車に乗ってエンジンをかけると、ナビがテレビ放送を映し出した。「あと2、3分で高さ10メートルの津波が来ます」とアナウンサーが叫んでいた。「そんなの、逃げられるわけない」。しかし、逃げるしかない。

 普通の道路はすでに大渋滞だった。土地勘を生かし、草っぱらや田んぼのあぜ道のようなところを無理やり走った。車のナビ画面には岩手・釜石の港が津波にのみ込まれる映像が映っていた。

 実際に津波が来たのは、1時…

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