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 新型コロナウイルスの影響でイベントや歓送迎会の中止が続き、花き業界が打撃を受けている。なかでも菊を取り巻く情勢は特に厳しいという。菊類の産出額が全国トップの愛知県では、生産者らが「新しいイメージ」を懸命に訴えている。

 「ボディーブローのよう……。もう、かなりこたえています」。2月中旬、同県西尾市の温室で、輪菊生産者の黒田清隆さんはつぶやいた。

 人工的に光をあてて開花時期を調整する「電照栽培」で、通年にわたって白い輪菊を育てている。黒田さんが組合長を務める「ロイヤル・マム」(組合員10人)は2018年度、東海・関東・東北方面に約510万本を出荷。品質は折り紙付きで、国家的な式典の装飾に使われたこともあるという。

 しかし新型コロナの感染拡大後、価格の低迷が続く。JA西三河によると、最初の緊急事態宣言後の昨年5月には例年比で約4割下落。その後、秋の彼岸にかけて上向く気配を見せたが、感染拡大の「第3波」で再び落ち込み、2度目の緊急事態宣言が出た今年に入って、また下落傾向という。

 背景には小売りの苦境に加え、メインの需要である葬儀の姿が変わっていることもある。「全日本葬祭業協同組合連合会」(事務局・東京)によると、近年はコロナ禍の影響もあり簡素な家族葬が増えている。

 また、祭壇や供花に対する考えも洋花や「故人の好きだった花を飾る」などニーズが多様化。新型コロナ感染防止で参列を見送り「花を贈りたい」という人は多いが、「菊以外」の傾向も強く感じるという。

 「逆風」はこれだけではない。黒田さんによると、設備維持にかかる重油代や人件費も高騰。また、流通量が減った時期でも思うように単価が上がらないという。「残るお金は雀(すずめ)の涙だったが、コロナがさらに追い打ちをかけた。1円、2円の下落でも厳しいところ、ひどいと二十数円レベルで下がっている」と嘆く。

 首都圏1都3県を除いて緊急事態宣言は解除されたが、需要が回復するかは見通せない。黒田さんの同業者からは、「菊の栽培をやめて別の花や果物にかじを切ろうか」といった声もあるという。

「イメージ打破」の新提案

 菊は皇室の紋章やパスポートの表紙にも使われるなど、国民にとって桜と並んで身近な花だ。ただ、葬儀や仏花のイメージが強く、家庭用やプレゼント用には敬遠されがちだ。生産者の黒野浩資さんは「たった1輪でもいい。花瓶がなければコーヒーカップでもいい。ぜひ家で飾って、菊の魅力を知って欲しい」と話す。

 満開の菊は、1輪でも存在感が抜群。真っ白な輪菊を緑の葉などと合わせれば、さわやかで存在感のあるアレンジに仕上がる。さらに菊は花もちが良く今の時期なら1カ月ほど楽しめ、枯れても花びらや花粉が散らかりにくい。

 菊の花言葉は「高貴」「真の愛」「清浄」――。黒野さんは「日常にうるおいを与えられる花だと思う。

 イメージを変えるのは簡単ではないが、需要拡大でこの過渡期を乗り越えたい」と話す。同じ県内のJA愛知みなみ(田原市)も結婚式での使用を提案するなど、伝統にとらわれない楽しみ方を提案している。(原知恵子)