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 「もう誰にも亡くなってほしくない」。踏切内にたたずむ女性(72)を助けた郵便局員の有熊智さん(35)が4日、広島県警海田署で感謝状を受け取った。救助した当時の思いを語った。

 2月10日午後1時ごろ、広島中央郵便局坂旧集配センターに勤める有熊さんは昼の配達を済ませ、配達バイクで帰路についていた。

 坂町平成ケ浜の踏切の中で、高齢の女性が呉方面を見つめ、1人で立っていた。一向に動く様子がない。有熊さんはバイクで先に渡りながら、「大丈夫ですか?」と声をかけた。女性は小さな声で「いいんです」と答えた。

 その様子が気になり、配達バイクを近くに置いてもう一度女性に声をかけた。「いいんです」と繰り返し、思い詰めた様子の女性。警察に連絡し、「話を聞きますよ」と声をかけ続けた。

 間もなく警報機が鳴り始め、遮断機が下りてきた。有熊さんは女性の肩を抱きかかえて踏切の外に避難させた。その直後、電車が通り過ぎた。女性は顔をくしゃくしゃにして「ごめんね」と泣いていたという。

 有熊さんがとっさに行動したのは、ある思いがあったからだ。

 3年前の7月6日、有熊さんは午後7時半ごろまで坂町小屋浦地区で配達をしていた。その直後、上流で砂防ダムが決壊。地区で15人が亡くなり、1人が行方不明のままだ。「たくさんの人が亡くなり、つらかった。だからもう誰にも亡くなってほしくない」

 有熊さんは感謝状を受け取ると、「当たり前のことをしただけだが、表彰していただきありがたい」。西岡達也署長は「事故を未然に防ぎ、人命を救助していただいた。感謝しかない」と語った。(三宅梨紗子)