住民票異動で「避難終了」、意思確認せずに統計から除外

西堀岳路
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 東京電力福島第一原発事故で福島県から埼玉県川越市へ避難した人たちについて、市が本人の意思確認が不十分なまま、市に住民票を移しただけで市内の避難者数の統計から除外していたことが関係者への取材でわかった。避難者数は被災者支援の施策にも関わるデータで、復興庁は住民票の異動だけで「避難終了」としないよう通知している。

 川越市は朝日新聞の取材に対して事実を認めたが、除外を始めた時期や人数は「不明」とし、現在の避難者数の再調査も検討したいとしている。

 避難者数は復興庁から報告を求められている都道府県に対し、各市町村が毎月1日現在の数字を上げている。川越市によると、復興庁の通知があった2014年以降も住民票を市内に移した本人へ意思確認せずに避難者から除外していた。

市は「個々の確認困難」と説明

 17年からは、市役所で住民票の届け出用紙を記入する机や受付窓口に「避難者の方は、その旨を職員までお申し出ください」という紙を貼りだし、これに対する申告の有無で意思確認したことにしていた。しかし貼り紙は本庁舎だけで、届け出が可能な市民センターなど他の12カ所にはないという。

 市は独自の被災者支援として、12~17年に1世帯へ年7万円の生活支援金を出すなどしてきた。市がまとめる避難者数は、こうした施策に反映される。市が県へ報告した避難者数は、報告を始めた15年は3月に172人だったが、今年1月は64人となっている。

 担当の市民課は、今回の問題を指摘した避難者らに対し「個々の意思確認が困難なため」と説明してきた。だが、課の端末で避難者の住民票の異動や現住所は把握できるようになっており、県へ報告するのに毎月チェックもしていて、意思確認のため連絡することは可能だった。

 市の担当部長は「結果的に本人の意思確認が不十分なまま避難者数から除いていた」ことを認め、「毎年のように担当者が代わるなかで一貫できていない部分はあったと思う。支援を打ち切られた避難者がいたという情報はない」と話す。

 市内で避難生活する30代の女性は、避難6年目に人数から外されたと知った。「市から意思確認されたことはない。今も中ぶらりんな気持ちで、ひと言連絡がほしかった」。福島県いわき市から避難してきた鈴木直子さん(47)は「原発事故による健康不安があり、地震だけなら県外へ避難していません。避難者数は事故被害の実態を示す基本データであり、私たちの存在のよりどころ。もっと大切にしてほしい」と話した。(西堀岳路)