イノシシに悩む「黄色い丘」 命運託された1匹の秋田犬

天野光一
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 「黄色い丘」と呼ばれる観光スポットが、愛媛県伊予市の犬寄(いぬよせ)峠にある。菜の花を中心に黄色い花が咲き誇り、地域活性化にも貢献してきたが、近年、イノシシが土を掘り返して花の株を台無しにしてしまう獣害に悩まされてきた。何とかしなければ――。丘の命運を託されたのは、一匹の子犬だった。

 黄色い丘は、伊予市双海町上灘の国道56号「犬寄トンネル」の上に広がる。近くの佐礼谷(されだに)地区に住む松浦弘正(ひろただ)さん(73)、千枝子さん(73)夫妻が、ミカン畑だった休耕地を開拓して2012年に始めた。

 地区の高齢化が進む中、「都会の若い人が遊びに来てくれる場所を」と、「市の花」でもある菜の花の種をまき、育てた。徐々に面積を広げ、今では2ヘクタールの丘一面が黄色く染まる。秋には黄色いコスモスや彼岸花も花を咲かせる。

 評判が広がり、菜の花の時期には1日に100人もの人が訪れるようになった。コロナ禍前は、星空観察会やチョウの観察会などのイベントも開かれた。

 広い敷地で雑草を刈り、花の手入れをする松浦さん夫妻。近頃、頭を悩ませているのがイノシシの出現だ。チューリップの球根を食べたり、ミミズを食べるために菜の花が植えられた斜面を掘り返したりする。

 犬のにおいがすればイノシシが嫌がるのではと、猟師に数匹の犬を連れて丘を歩いてもらった。その後10日ほどはイノシシは姿を消すが、また戻ってきてしまう。ならばと、松浦さんは犬を連れて自分でパトロールしようと思いついた。

 昨年9月、松浦さんは生後2カ月のメスの秋田犬を飼い始めた。「黄色い丘」の主役である菜の花にあやかって、名前は「菜々」。人なつっこく、人や車にすぐに寄っていくため、まずは「待て」「お座り」といった指示が守れるよう、しつけ始めた。

 体はすくすく大きくなり、体重は生まれた時の4倍の19キロに。今ではほぼ毎日、松浦さんに連れられ、丘全体をパトロール気分で散歩している。

 近くに住む松浦さんの友人の逢沢亜月(あつき)さん(45)は、散歩する菜々の様子や愛らしいしぐさを「黄色い丘のなな」という名前でフェイスブックに投稿。それを見て訪れる人も増え、菜々は丘の人気者になった。

 「時折、風を楽しむように立ち止まり、しぐさが絵になる」と逢沢さん。松浦さんは「1匹ではイノシシに勝てないかも知れないが、人々を癒やす看板犬にはなってくれそう」と期待している。

 黄色い丘では14日と28日の午前10時から午後3時まで、「菜々フェスタ2021」というイベントが開かれる。菜々も登場し、犬用のグッズ販売やハンドメイドマーケットなどがある。雨天中止。(天野光一)