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 東日本大震災では、甚大な被害が広い範囲に及び、復興まで長い時間を要した。和歌山県では、災害が起きる前から被災後のまちの姿を描く復興計画を作るよう、各自治体へ呼びかけている。すでに完成した自治体がある一方、計画策定まで手が回らない自治体もある。

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 大規模災害では、道路やライフラインの復旧、がれきの処理などに時間がかかり、長期的なまちづくり計画を作ることが遅れがちになる。復興に時間がかかると、避難した人が避難先で生活基盤ができるなど、人口流出が進む。災害後も地域の活力を保つためには、素早い復興がカギになる。

 県は、東日本大震災で被災した地域の事例や課題を参考にし、2018年2月、災害後のまちづくり計画を作る際の手引きをまとめた。南海トラフ巨大地震の危険が指摘されているため、特に沿岸19市町に計画を作るよう呼びかけている。

 県によると、沿岸部の美浜町では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大17メートルの津波が襲ってくると想定されている。県の手引きができた後に、町としても計画の検討がはじまった。ノウハウも人手も足りなかったが、町防災企画課の大星好史課長は「計画は必要だと思ったのでチャレンジしてみようと考えた」と話す。

 町内の8地域ごとに被災想定をし、現在の土地利用や地形などをもとに被災後の計画を練った。被災後について「基本的には現地での再整備」「住宅開発等により農地の蚕食を受けないよう今後ともまとまった農地を維持していくことが必要」などと盛り込んだ。

 事前復興計画は、災害後に机の引き出しから出して、議論のたたき台にするようなイメージで作ったと大星課長は言う。「単なる『絵』かもしれないが、将来のイメージを共有できる。それが大事」

 一方の串本町。「まずは高台移転から。新庁舎が7月から開く予定で、主要施設が全て高台に上がった。これで一段落という状態」と田嶋勝正町長は語った。

 県によると串本町では、南海トラフ巨大地震が起きた場合、最大17メートルの津波が襲ってくると想定。また、1メートルの津波が最速3分で町に到達するなど、大きな被害が想定されている。町では11年から、町立病院などの機能を高台へ移した。その最終盤が町役場の移転だ。

 ただ、移転には町民から「行政だけ安全なところに行くのか」などと批判の声も上がったという。被災後も町の機能を維持するための移転であることの説明などに時間をかけた。田嶋町長は「災害が起きていない中で(災害後の)計画づくりは、難しい」と述べた。

 県によると、3日時点で事前の復興計画ができているのは美浜町のみ。住民との議論を経て、方向性を共有することは一筋縄ではいかない。県は、自治体と情報共有を図り、関係機関との橋渡し役も担うことで、計画作りを支える方針。県防災企画課の担当者は「できるかぎり早い策定を呼びかけていく。自治体と一緒になって作っていきたい」と話した。(藤野隆晃)

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