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 昨年末から新型コロナウイルスのワクチン接種を進めている欧州の国々で、高齢者の感染者数が下がるといった効果が表れ始めた。国民全体の接種率は1割に満たない国が大半だが、老人ホームなどの入居者を優先接種してきたためだ。

 AFP通信は3日、スペインの高齢者施設で新型コロナに感染した人が、1月から2月にかけて95%減少したと伝えた。政府機関が2日に公開した報告書で明らかになったという。

 1月18~24日の1週間で、国内の高齢者施設で感染した人は4439人だったのが、2月15~21日の1週間では215人にまで激減した。同時期に施設でコロナで亡くなった人も、673人から157人と77%減った。

 スペインではこれまでの7万人近い死者のうち、高齢者施設で亡くなった人が3万人近くを占める。全体の死者の95%が60歳以上だ。政府は昨年12月末にワクチンが供給されて以来、施設の入居者を優先的に接種してきた。

 これまで2回接種できたのは約130万人で、全人口の3%足らずだが、約35万2千人いる高齢者施設の入居者に限れば、94%が1回の接種を終え、2回接種した人は82%に上る。政府は秋までに全人口の7割に接種を終えることを目指す。

 同様の効果はベルギーでも確認された。昨年12月中旬時点で、入院患者の2割近くが老人ホームなどの施設のお年寄りだったが、ワクチン接種が本格化した1月から比率が低下。2回目の接種が始まった1月下旬以降は比率の低下が顕著になり、現在は5%にまで下がった。85歳以上の死者も2月下旬には週67人と、昨年末の4分の1になっている。

 ベルギーの保健当局は2日の記者会見で、こうした傾向は「ワクチン接種のキャンペーンと並行した動きで、状況は改善している。勇気づけられる」と説明した。人口が1100万人あまりのベルギーでは、1回でもワクチンを受けた人は人口の5%に届かないが、85歳以上に限れば25%に達している。

 英国では入院の予防効果が出たことが確認された。保健当局が今月1日、1回目の接種の3~4週間後に、80歳以上の入院を防ぐ効果が80%を超えたという分析結果を明らかにした。接種後に感染した人の入院率と未接種の人とを比較し、先に接種が始まった米ファイザー・独ビオンテック製では、死亡を83%減らす効果があったという。70歳以上を対象にした分析では、1回目の接種の4週間後には、新型コロナの症状を抑える効果がファイザー製では57~61%、英アストラゼネカ製では60~73%だった。

 イタリアやフランスでも2月以降、高齢者の感染率が下がり、入院者に占める75歳以上の人の割合が減るといった効果が確認されている。フランスのカステックス首相は2月下旬、「ワクチンキャンペーンの効果が実感できるようになってきた」と誇った。

 ただ、人口の3割に接種した英国をのぞけば、欧州の大半の国ではなお国民の9割が接種できていない。感染力が強い変異株が猛威を振るう傾向は変わっておらず、各国はなお飲食店の店内営業の禁止や夜間外出禁止令などの厳しい規制を課している。(パリ=疋田多揚、ロンドン=下司佳代子、ローマ=河原田慎一)