見えてきた実力 新型コロナワクチンに感染予防効果あり

酒井健司
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 1月に「新型コロナワクチンには感染予防効果はない」といった見出しの記事が週刊誌に掲載されました。ファイザー製のワクチンは、臨床試験において高い発症予防効果や重症化予防効果を示しましたが感染予防効果は検証されていませんでした。発症や重症化を防いでも感染そのものは減らさず、かえって無症状感染者が増える可能性が指摘されていたのは事実です。

 ですが、「感染予防効果がない」と「感染予防効果があるかどうかはわからない」は異なります。週刊誌の記事が出た1月の時点では「感染予防効果があるかどうかはわからない」とまでは言えても、「感染予防効果がない」とするのは明確に誤りです。

 「感染予防効果がない」という刺激的な見出しは雑誌の売り上げには貢献するでしょう。しかし、ワクチンの効果について誤った情報は命にかかわります。人々の命を犠牲にして出版社が利益を得ているようなものです。出版社も誤りを認めたのか、ウェブ上の週刊誌の記事はいまでは削除されています。

 2月24日に、臨床試験ではなくリアルワールドでファイザー製のワクチンの効果を検証したデータが論文として発表されました。これまでもリアルワールドにおけるワクチンの高い有効性について報道はされていましたが、論文となったのは初めてです。医学論文では詳細なデータの提示や専門家による査読があり、報道よりも信頼できます。

 この研究ではイスラエルワクチンを接種した約60万人を、接種しなかった約60万人と比較しています。臨床試験や報道と同じく高い有効性を示しました。十分に免疫が付く2回目の接種から7日目以降では、ワクチン接種群において新型コロナの発症は94%、重症化も92%減っています。有望なことに、PCR検査で確認された感染は92%、無症状感染も90%減っています。ファイザー製のワクチンには発症予防効果や重症化予防効果だけではなく、感染予防効果もあることが示されました。

 研究はこれで終わりではなく、本人の感染だけではなく他者への感染を減らす効果があるどうか、イスラエル以外の地域ではどうか、ワクチン接種後に免疫が維持される期間はどれぐらいか、変異株に対しても効果があるかどうか、未知の副作用がありはしないか、さまざまな研究が続けられるでしょう。ただ、今回の研究を覆す別の研究が発表されない限り、「ワクチンには感染予防効果があるかどうかはわからない」もいまや誤りです。

 別の研究ではファイザー製ワクチンが感染者のウイルス量を減らすことが示されています。他者への感染を減らす効果は実証が難しく直接は観察されてはいないものの、無症状感染者を減らすこと、感染してもウイルス量を減らすことから、ワクチンが他者への感染も減らすことはほぼ確実だと私は考えます。

 ※参考:Dagan et al., BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33626250/別ウインドウで開きます

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